評者：岩田健男（東京都・デンタルヘルスアソシエート代表）

　GPの悩みを解決するエンド専門医からの提言集．
　GPが日常診療で歯内治療（エンド）に携わる頻度はきわめて高い．ほとんどの場合，エンド完了後には歯冠修復治療をともなう．それゆえ，エンドの良否が歯と歯冠修復の予後を左右することになる．ひるがえって，多くのGPはエンドの予後不良に頭を悩ませていることが多いのではなかろうか．
　本書は，エンドの高等専門教育を受けた石井先生をはじめとする著者の先生方が，成功のためのエンドのknow-how（考え方）とhow-to（テクニック）を詳しく解説したものである．エンドにおける診査・診断，無菌的処置，根管形成，根管の洗浄・貼薬・仮封，根管充填，エンド後の支台築造と歯冠修復などのテーマが6 章に分けて述べられている．GPはこれらのテーマを毎日のように実践しているわけであるが，実は，どのテーマにも確固とした科学的根拠をもたず，経験則によるテクニックを駆使して治療に対峙し，臨機応変に凌いでいるというのが本音ではなかろうか．多くのエンド成功の秘訣が本書中に披瀝されている．
　無菌的処置のためのラバーダム防湿の重要性とテクニック，生物学的根管形成のインスツルメンテーション，根管の洗浄・貼薬・仮封の正しい考え方と滅菌法，作業長と作業幅径の決定法，さまざまな根管充填材の選択肢と根管充填法，根管口の封鎖と支台築造のあり方などが理路整然と説明されている．GPが自分のエンド・テクニックを確立していくうえで，参考にして学ぶべき提言がプロの観点から満載されていると考える．
　読者のなかには，内容的に少しハードルが高いと感じる先生もおられるだろう．ラバーダム，Ni-Ti製ファイル，さまざまな薬剤と根管充填材など，経済的制約と時間的限界が障壁となるが，成功するエンドをめざすのであれば，できるだけ見習って，日常臨床に取り入れていくべきである．エンドに限らず，歯科治療は小外科の連続である．そして，外科は技術がよくないとダメ．主治医と歯科診療所が患者さんから信用を得て，長期にわたる信頼関係を継続するためには，技術を磨く必要がある．
　プロであるエンドの専門医たちが「成功する米国式テクニック」を解説してくれているのだから，その技術を盗んで自分のものにし，患者さんたちに反映するのは智慧の運用法として賢明であろう．