新聞クイント2017年3月(お試し版)
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2017年3月10日(金) 第255号2 今月のニュース社 会口から食べる喜びを支える管理栄養士佐藤真由美特別養護老人ホーム一心苑 管理栄養士口から食べる喜びを歯科医療従事者の皆さんと共有したい 歯科医療現場で活躍する管理栄養士が増えてきているなか、さる1月に開催された平成28年度全国老人福祉施設研究会議(長崎会議)の口腔ケア部門で奨励賞を受賞した管理栄養士の佐藤真由美氏。佐藤氏が栄養の視点から食支援という共通の目的でアプローチする歯科に求めていることとは。佐藤:このたび、平成28年度全国老人福祉施設研究会議(長崎会議)で「重度嚥下障害患者への経口摂取継続に向けた取り組み―口から食べたい気持ちに寄り添って―」と題するテーマで発表し、奨励賞というすばらしい賞をいただくことができました。今回の受賞は私一人の力ではなく、まさに多職種連携の成果といえます。 今回の症例は、全身疾患から口から食べることに限界を感じ、胃ろう造設について医師に相談したところ、河瀬聡一朗先生(石巻市雄勝歯科診療所、写真左)を紹介していただきました。河瀬先生による摂食嚥下機能の評価で、歯科衛生士、理学療法士、看護師、介護員などの多職種と連携して対応することで経口摂取は継続できると判断していただきました。 その後、食形態、食事の際の姿勢や介助方法の検討、口腔ケア、嚥下体操やブローイング、アイスマッサージなどのリハビリを取り入れた結果、2か月でむせや食事中断の回数が減少し、1回の食事時間も40分から20分に短縮しました。また、義歯を新製し、義歯装着後は固形物も食べられるようになり、とくに口腔ケアを徹底したことで誤嚥性肺炎も発症せず、初診時から数年経過した今でも口から食べることができています。 摂食嚥下機能の評価をしていただいたことで、この利用者さんの食形態から栄養管理など、管理栄養士としての専門性が発揮でき、多職種で口から食べる喜びを共有することができました。食べる評価ができる歯科医師の先生方が増えることで、地域で口から食べたいと思っている方々を多職種で支えることができます。 今後ますます高齢化が進むなか、高齢者が日常生活の中で健康を維持していくためには、低栄養状態を防ぐためさとう・まゆみ2003年3月、尚絅女学院短期大学生活科学科食物栄養専攻卒業。同年4月、社会福祉法人旭壽会 特別養護老人ホーム一心苑入職。2003年、栄養士免許取得。2008年、管理栄養士免許取得。2016年、在宅訪問管理栄養士免許取得。にしっかり噛んで口から食べることが大切ですし、その評価が必要不可欠となります。現在、河瀬先生が代表を務められている「男の介護教室」や、医療・介護の現場で悩んでいる方や勉強したい方が多職種で交流しながら摂食嚥下について学べる勉強会「食べる輪」といった情報交換の場も、地域で横のつながりを広げていくためにはとても大切です。 施設と在宅の介護現場による栄養管理の難しさは課題として挙げられますが、1人でも多くの歯科医師の先生方が食べる評価をしてくださり、私たち管理栄養士につないでいただけることを願っています。そのためには、必要な情報を私たちからも積極的に発信し、口から食べる喜びを歯科医療従事者の皆さんと共有したいと思っています。 熊本地震の本震があった2016年4月16日夜、部屋の棚は倒れて壁は剥がれ落ち、外へ逃げ出そうにもベッドからの一歩すら踏み出せないほどの大きな揺れを感じた。身の危険を感じ、すぐさま頭から布団をかぶり、ただただ揺れが収まるのを祈るように待つだけだったあの瞬間が、つい昨日の出来事のように鮮明に思い出せる。思い出せるというより、忘れることはできないといったほうが正しいかもしれない。 停電・断水・余震が続くなか、車中や庭に建てたテントで寝起きする生活で、もちろん入浴もできない状態。自宅から車で約1時間の温泉施設が営業していることを知り、ようやく入浴できたのは本震から一週間経ってからだった。 その温泉施設で偶然にも再会したお客様から「いつから営業するの?」と尋ねられるとは、想像もしなかった。 美容は生命に直結するものではない。美容業に携わる者としては、このような非日常生活のなか、来客数が減少するのは当たり前だと思っていた。しかし、温泉で営業再開を尋ねられるなど、また余震が落ちつくとともに少しずつ来客数とお問い合わせが増えるという自身が抱いていた予想に反する現象が起こった。店舗内の片付けが間に合わないため、近所にある美容室の一角を間借りして営業を再開した。 最初のお客様がこう話してくださった。 「このような状況で気持ちが落ち込む時だからこそキレイにしたいです。まだ私のように施術を受けることができない方が身近にいることももちろん知っています。でも『何もしない』ということではなく、元気になれるし、できる人から通常の生活を送ることは大事なことじゃないかな?」 待ってくださる方がいる。私たちにもできることがある。 いまだに避難生活を余儀なくされ、さまざまなストレスを抱えている人たちがいる。非日常から少しでも日常を取り戻したいと思う時、「身だしなみを整える」という行為は、毎日を明るく生きるために必要な表現方法の1つなのかもしれない。(山本恵理子・阿蘇まつげエクステ専門店Salon E.Y店主)毎日明るく生きるために。美しく。リレー連載 ③繋ぐちから繋ぐちから 2月12日(日)、東京医科歯科大学鈴木章夫記念講堂において、国際咬合シンポジウム2017(クインテッセンス出版主催)が開催された。 まず、北峯康充氏(小社代表取締役社長)による開会挨拶の後、座長を務めた古谷野 潔氏(九州大学大学院歯学研究院教授)による基調講演「咬合は変わったか?」が行われた。 引き続き、Martin Gross氏(イスラエル開業)が登壇。午前は「科学的視点から現代咬合の基本を考える(基礎・理論編)」、午後は「症例に応じた咬合付与を考える(臨床編)」と題して、氏の大著『咬合のサイエンスとアート』(クインテッセンス出版刊)を咬合の歴史とともに紐解きながら、臼歯部咬合支持、咬合高径、偏心運動時の誘導などについて詳説した。 筒井照子氏(福岡県開業)は、午前は「咬合と全身のかかわりについて(基礎・理論編)」、午後は「SMC分類に沿った各種治療の実際(臨床編)」と題して登壇。基礎・理論編、臨床編ともに示唆に富んだ内容を披露。なかでも、バーチャル咬合器などを用いた限界運動、咀嚼運動の動画を用いた評価法は、会場の関心を集めていた。 午後の山﨑長郎氏(東京都開業)は「アンテリアガイダンスと犬歯誘導の重要性」と題し、アンテリアガイダンスの重要性について触れ、長年の臨床経験に基づく考え方を披露した。 前田芳信氏(大阪大学大学院歯学研究科教授)は「可撤性補綴装置を用いた補綴治療における咬合を考える(RPDとIODを中心に)」と題し、可撤性補綴装置での咬合の役割や、天然歯、インプラント、義歯における咬合の生理学的背景について言及した。 本会は、歯科臨床家が指標とすべき咬合のあり方を考える1日となった。咬合の理論と実践を語りあう場に300名以上が集う国際咬合シンポジウム2017講演終了後のディスカッションの様子。

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