新聞クイント2017年4月(お試し版)
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2017年4月10日(月) 第256号2 今月のニュース企 業3期目に挑む日本歯科医学会の「顔」住友雅人日本歯科医学会会長創造性とスピード感をもって会務に取り組みたい 歯科医療を通して全身機能の維持・回復の重要性が叫ばれるようになって久しい。そのようななか、日本歯科医学会の第95回評議員会で3期目が確定した住友雅人氏。歯科系学術研究団体のトップを務める氏は、歯科医療全体を俯瞰しながら、どのようなビジョンおよび戦略で挑むのだろうか。本欄では、氏が目指す方向性および3期目に向けた想いをうかがった。住友:私は、会長就任から3年半の間、歯科界を取り巻く情報の収集と伝達、それを通した歯科界全体の躍進のためにまい進してきました。これまで全国各地で開催された分科会の総会・学術大会で多数の方々と懇談し、多くのことを学んでいます。また、学会HPの「学会長挨拶」を原則2か月ごとに更新することをはじめ、膝を突き合わせた情報収集やインターネットを利用した情報発信など、さまざまな手段で学会の活動や考えを会員や社会と共有しています。 私が目指している方向性は、分科会間の横糸づくり、他団体との連携です。このスタンスや方向性は、分科会の方々と大きな差異はないことは、これまでの成果や評価の高さが物語っています。また各地の歯科医師会にお招きいただくと、歯科医療現場の先生方から学会の活動について、つねにうれしい言葉をいただいています。もちろん、そのような高い評価は、みなさま方の力なくしてはありえませんが、学会自体の発展と組織それぞれの発展にお互いに協力しようという気持ちが相互に涵養され、実行されてきています。とりわけ、分科会に存在するさまざまな問題に対しては、本学会はコーディネーターとしてその解決のための支援を行う役目と、より活性化するように育てるという義務があります。本学会会員でもある日本歯科医師会の会員に、私が目指している学会の使命と活動をよくご理解いただき、ともに進みはじめているのです。 私たちの仕事は、デジタルのように1と0、オンとオフのようにクリアカットには行きません。目標は比較的立てやすいのですが方略は難しく、人的資源はもちろん物的資源を工程表に入れ込んで目標を達成していきます。その結果には評価と検証がともないます。時間を要することですが、これらを1つ1つていねいに進めていけば社会は認めてくれるのです。組織はつねに動いていますので止めてはなりませんし、組織の継続性が求められます。 私がなすべきことは、3期目で仕上げるもの、次期に引き継ぎやすい形にしておくもの、新しくスタートさせるものなどをしっかりと計画しておくことです。その意味でも3期目は、たいへん重要な位置づけと考えています。 学会に求められている役割とその目標を具現化するために、創造性とスピード感をもって会務に取り組みます。 熊本地震発生時、私が運営している南阿蘇村のグループホームや有料老人ホームなど6つの小規模施設には55名の高齢者がいた。14日前震が気になった私は施設で休んでいた。午前1時26分、不気味な地鳴りの直後、大きな音をたて建物が揺れる。真っ暗ななか、全施設の安否確認に走る。不安で今にも泣き出しそうな職員を励ましながら、建物の損壊がひどい一部の利用者は車中泊をお願いした。1つ1つの判断に命の責任を感じながらの指示だった。 夜が明けると、信じられない光景が広がっていた。計73名の職員のうち、駆けつけることができたのは30名程度。隣の阿蘇市や西原村から通う約25名は、道路やトンネルの崩落で通勤困難な状況になった。職員不足から、日勤や夜勤の業務に入ってもらう専門職のボランティアが必要だった。そこでインターネットを使い、専門職ボランティアと、ボランティアの調整や管理を担うコーディネーターの派遣を知人に依頼。ボランティアを派遣する対象は南阿蘇ケアサービスの施設だけでなく他の施設にも拡大した。福祉避難所の開設支援も担ったうえで、村内各施設に専門職を延べ約1,700名派遣することとなった。 熊本地震をきっかけに、南阿蘇村には災害時に介護や看護の専門職をボランティアとして派遣する「みなみ阿蘇福祉救援ボランティアネットワーク」の仕組みができた。復興に向けて施設間や行政と連携を図るべく、今も協議を続けている。 私たちは、阿蘇山の麓で活火山としての厳しさと心穏やかに見せてくれる風景、そこから感じ取れる愛情に包まれて生活していた。しかし、阿蘇の山々は地震と大雨の影響により至る所で土砂崩れが発生し、赤茶けた土壌が姿をさらけ出すとともに、私たちの生活も一変した。 阿蘇の蘇は「よみがえる」と読むことができる。震災は、私たち自身の「生」をより強固にさせるものである1つの試練に違いない。阿蘇で生き老い最期を迎えるその瞬間までたくましく力強く生きていこうと感じている。それが支援してくださった皆々様への恩返しになると思っている。 (松尾弥生・㈱南阿蘇ケアサービス副代表)阿蘇で最期を迎える瞬間まで生きる。リレー連載 ④繋ぐちから繋ぐちから 2月17日(金)、東神ビルディング別館11号館(東京都)において、Digital Dental Solution Center-Tokyo(DDSC-Tokyo)オープニングセレモニー(デンツプライシロナ主催、北本優子代表取締役社長)が開催され、国内外から多数の同社関係者、および日本国内の著名なユーザーが参集した。DDSC-Tokyoは、近年のDigital Dentistryの進展を受け、同社の「シムプラントガイド」「アトランティスアバットメント」「アトランティススープラストラクチャー(旧称:ISUS)」、そして「Z冠」を1つの工場内で製作するために設立されたもの。とくに、DDSC-Tokyoは同所を含む世界4ヶ所の工場のうち、上記の4製品すべてを製作できる唯一の工場であるとのこと。 冒頭、Lars Henrikson氏(Dentsply Implants社Group President)は挨拶の中で、「DDSC-Tokyoの設立は、当社の2010年代の出来事の中でもっとも大きなものの1つ」などと今後の抱負を述べた。また、小野田充利氏(デンツプライシロナ社取締役副社長)、Thomas Cole氏(Dentsply Sirona社Vice President, DIS Operations and Global Expansion)もあいついで祝辞を述べた。 その後、参加者には工場見学ツアーが用意され、DDSC-Tokyoの開設にあわせて導入された最新の機材などを見学した。また、その後行われた説明会ではシムプラントガイドの納期が今後は6営業日から5営業日に短縮されること、また最近のトレンドとなっているアンギュレーテッドスクリューシステムの「ASA」、コーヌスクローネを製作できる「アトランティスコーヌスコンセプト」などの新製品のプレゼンテーションも行われた。「Digital Dental Solution Center-Tokyo」を開設デンツプライシロナ株式会社挨拶を行うLars Henrikson氏。すみとも・まさひと日本歯科医学会会長。「歯科界全体の躍進」をミッションに掲げ、日々活動中。第95回評議員会の役員(学会会長)選挙において、3期目が確定している。日本歯科大学名誉教授。2016年4月、一般社団法人日本歯科医学会連合理事長。

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