新聞クイント2017年8月(お試し版)
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2017年8月10日(木) 第260号2 今月のニュース学 会 阿蘇の南郷谷、高森町で育った私は中学校を卒業後、高校、専門学校と7年間を福岡で過ごした。この7年間は私の青春そのものでありとても充実していた。生活に必要なほとんどが整い住みやすい環境だと思っていたが、私には違ったらしい。 蛇口からいつでもおいしい水が飲める。家から1歩外に出れば壮大な阿蘇外輪山が一望できる。この感情は地元を離れなければわからなかっただろう。地元の本当の良さを知った私はさらに地元への愛着が深くなり、「阿蘇に帰って理学療法士をしたい」と強く感じるようになった。そして、2016年3月に専門学校を卒業し阿蘇に戻ってきた。4月、新社会人となった私は不安よりもむしろ喜びや楽しみばかりで、これからの生活に胸が高鳴っていた。 社会人として2週間が経過しようとしていた4月16日、熊本地震が阿蘇を襲った。阿蘇大橋の崩落および俵山トンネルの倒壊で道が寸断され、職場は人員不足が露呈した。水道や電気が止まりライフラインが途絶えた。この状況を目の前にしてじっとはしていられなかった。 私は仕事の休みを利用して高森町の避難所を回った。窮屈な避難所生活の中で、何日もまともに体を動かしていないという方が多く存在した。避難所の保健師さんに協力していただきながら、廃用リスクの高い方から順番に、寝たきりや廃用を防ぐための体操やストレッチを行い、目の前の1人ひとりの方が少しでも避難所生活によるストレスや不安を取り除けるよう尽力した。必死だった。 「やっと地震の緊張から解放されたごとある」「あた(あなた)が来てくれて良かった」。理学療法士としての経験が浅く、わずかなことしかできない私に多くの感謝の言葉をいただいた。阿蘇に帰ってきて良かった、理学療法士になって良かった、と心から感じることができた。 震災から1年以上経った今日も、利用者様の「あたがお蔭」の言葉を励みに、田舎の女子力全開で理学療法を行い、自分の想いに真っ直ぐ生きる私がいる。(今村美寿瑞・介護老人保健施設リハセンターひばり 理学療法士)自分の想いに真っ直ぐ生きる。リレー連載 ⑧繋ぐちから繋ぐちから会長に就任した東京都歯科技工士会の「顔」石川功和東京都歯科技工所開業 7月5日(水)、歯科医師会館において、日本歯科医学会(住友雅人会長)による記者会見が開催された。会見前に開催された第1回理事会にて、3期目となる住友執行部の役員業務分担および平成29年度の事業計画などが決定された。住友氏は3期目にあたり、組織の継続性を強調し、さまざまな諮問についても答申書作成で終わることなく具現化していく姿勢を求めていくとした。以下に役員と所属を示す。【副会長】松村英雄(日本大学歯学部)/井上 孝(東京歯科大学)【総務理事】今井 裕(獨協医科大学)【常任理事】古橋會治(日本歯科医師会)/小林慶太(日本歯科医師会)/山本照子(東北大学)/小林隆太郎(日本歯科大学生命歯学部)/西原達次(九州歯科大学)/古郷幹彦(大阪大学大学院歯学研究科)/森田 学(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)/木本茂成(神奈川歯科大学大学院)/栗原英見(広島大学大学院医歯薬保健学研究科)/櫻井 薫(東京歯科大学)/関本恒夫(日本歯科大学新潟生命歯学部)/渡邉文彦(日本歯科大学新潟生命歯学部)【理事】寺田仁志(日本歯科医師会)/松尾敬志(徳島大学大学院医歯薬学研究部)/市川哲雄(徳島大学大学院医歯薬学研究部)/清水典佳(日本大学歯学部)/河合達志(愛知学院大学歯学部)/浅海淳一(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)/一戸達也(東京歯科大学)/渋谷 鑛(日本大学松戸歯学部)/白圡清司(大分県開業)/金子明寛(東海大学医学部)/弘中祥司(昭和大学歯学部)/古谷野 潔(九州大学大学院歯学研究院)/仙波伊知郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)/宮崎真至(日本大学歯学部)/宇井和彦(東京都開業)/冨士谷盛興(愛知学院大学歯学部) 敬称略第3次住友執行部がスタート日本歯科医学会会見で挨拶する住友雅人氏。組織一丸となって歯科技工士の存在をアピールしたい 近年、国民の歯科医療に対する期待は高まっているが、歯科技工士不足が患者さんの口腔の健康にどのような影響を及ぼすのかということは、国民にはあまり知られていない。会員数約1,000名を擁する東京都歯科技工士会会長にこのたび就任した石川功和氏は、広報活動をはじめ、どのような考えで組織運営に取り組むのか。石川:先日発表された平成28年歯科疾患実態調査では、国民の歯科への関心の高まりや歯科保健の充実もあり、8020の達成率が5割を超えるほどになりました。また、近年では自分の歯がなくなっても歯科技工士が製作する義歯などによって、しっかり噛むことで認知症の予防につながるという研究データも出されています。 歯が残る時代を迎え、欠損補綴治療は減少傾向にあるといわれていますが、高齢者の増加にともなう歯周病による歯の喪失や、歯科技工物の再製作が増えてきている現状があります。 私たち歯科技工士の仕事は、単にモノづくりという側面だけではなく患者さん1人ひとりの口腔機能を維持・回復するための歯科技工物を提供し、国民の健康寿命の延伸やQOLの保持・向上に大きく貢献しています。しかし、今後ますます高齢者が増加することが予想されるなかで、このまま歯科技工士が減少していくことになれば、質の高い歯科技工物を提供することが困難になってくるわけです。 大学全入時代と呼ばれて久しいなか、歯科技工士を目指す若い学生さんがいることはたいへん喜ばしいことです。私たちやラボ経営者は、次世代の歯科技工界を担う人材育成を真剣に考えていかなければならないと思います。たとえば有資格者である歯科技工士が歯科用CAD/CAMシステムを使いこなすことで高品質の歯科技工物の安定的な供給が期待できることなど、学生さんたちには歯科技工士の魅力や喜び、生きがいなどを伝え、国民に対しては歯科技工士の認知度を向上させるための情報発信が必要となります。しかし、個人の活動は限界がありますので、私たち歯科技工士が組織で取り組む必要があると思っています。いしかわ・よしかず1974年、日本大学歯学部附属歯科技工専門学校卒業後、村岡歯科勤務を経て、1993年、I.A.C.開設。東京都歯科技工士会理事、副会長を経て、2017年7月より会長に就任。現在、日本歯科技工学会副会長も務める。 そこで当会は、東京都民の保健衛生向上と公共福祉に貢献することを目標に掲げ、歯科技工技術レベルの維持・向上を目的とした生涯研修事業をはじめ、最新の歯科技工技術に関する講習会など、東京都より委託された学術事業を基軸にさまざまな事業を行っています。これらの事業は、会員・非会員問わず都内すべての歯科技工士が無料で受講できますが、近年危惧されている歯科技工士養成機関の学生募集停止や閉校が増えていけば、私たちの組織率が低下することにつながり、その結果、事業の継続が困難になってきます。 したがって若い会員の意見を積極的に取り入れ、会員の労働環境が少しでも改善するように組織一丸となって歯科技工士の存在をアピールしたいと考えています。

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