新聞クイント2017年10月(お試し版)
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2017年10月10日(火) 第262号2 母となって約一年が経ち、育児に追われていた2016年4月、熊本地震が発生した。 まさか自分の身にこのような有事が起こるとは想像すらできず、いつ収まるのか予想できない余震が続くなか、歯科医師の夫は震災翌日から被災された方たちへの口腔ケアや支援物資集めに奔走していた。私はそのような夫の姿を見る一方で自分の無力さ感じ、また、母親としての災害に対する知識と備えの乏しさに心身ともに疲れ、ストレスはピークに達していた。とはいえ、激変した環境の中で、震災前の生活を一日でも早く取り戻すことに必死だった。 震災後は、母親として家族や子どものサポートが主になり、自分の心身のケアもできないまま、家族を守ることを優先してしまう。周りの多くの母親である友人たちも「母乳が出ない」「眠れない」などと、不安やストレスを感じていた。私は震災を契機に、1人の女性として困っている方々に寄り添い、手を差し伸べることのできる人になり、そのような人を増やしたい!という思いが、日が経つにつれ強くなっていった。 ちょうどその頃、夫の歯科医院で小児矯正の一環で取り入れていたバランスボールエクササイズの魅力に引き込まれた。体(姿勢)を整えるだけでなく自律神経を整え、ストレスを軽減する効果があるということもあり、震災後からつねに緊張した毎日を送るママさんたちの心と体の健康の維持・回復に貢献すべく、まずみずからがバランスボールインストラクターとして活動することを決意した。 現在は、バランスボールによって、心も体も満たされるママさんたちが増えることを目指し、 熊本県内の子育て支援センターやさまざまなイベントに参加している。 ママさんたちが自己を認め、少しでもイキイキとした育児ができるようにサポートしたい。また女性としての人生を楽しみ、さらには社会参加の場となることで、熊本復興にさらなる加速と、女性ならではの明かりを灯してくれるものと信じ、産後のママさんケアに全力を注いでいる。(本田 鮎・東町グラン歯科 MFT担当、(一社)体力メンテナンス協会バランスボールインストラクター、産後指導士)ママさんの心と体のバランスを支える。リレー連載 ⑩繋ぐちから繋ぐちから「AAED」の会員に選出された歯科医師北原信也東京都開業目標を高く設定し、それに向かって努力してほしい 数多くの条件をクリアした歯科医療従事者のみ入会が認められるAmerican Academy of Esthetic Dentistry(以下、AAED)。2017年8月、その非常に狭き門とされるAAED会員に北原信也氏(東京都開業)が選出された。今回の結果は、あくまでも通過点と語る北原氏が読者に伝えたいメッセージとは。その想いをうかがった。北原:AAEDには、2007年に初めて参加させていただきましたが、当時、私の審美治療の基準となった世界的に著名な先生方の講演を必死に聞いていたことをとても懐かしく思いました。このたび、そのような先生方が名を連ねる会員に選出されたことは、率直にたいへんうれしく思っています。その一方で、非常に権威ある学会の会員の1人としての責任も感じています。 AAEDは、会員となる条件として数多くの試験をパスしなければなりません。第一次審査は膨大な数の書類審査に始まり、第二次審査ではビデオ審査など、そして最終選考は1年間に及ぶロビー活動を経て、年次ミーティングの最終日に評議員の投票によって決定されるわけですが、私は約3年かかりました。もちろん、今回の選出にあたっては、多くの歯科関係者にご協力いただいたおかげですので、この場をお借りして感謝申し上げたいと思います。 私が目指す歯科医療は、見た目の美しさだけでなくエビデンスに基づく歯科医療、つまり審美性と機能性が融合した歯科医療です。今回の結果は、そのために私がこれまで取り組んできたインターディシプリナリー・アプローチをはじめ、歯科医療に対する考え方・姿勢などが評価されたと思っていますので、つぎなる目標に向けて日本の歯科界を盛り上げていきたいと考えています。 今回の内容を通して私が読者の皆さんに伝えたいことは、目標を高く設定し、それに向かって努力する大切さです。母校で兼任講師として学生に教える機会をいただいていますが、歯科医師国家試験に合格することは歯科医師としてのスタート地点であり、通過点にすぎません。たとえば自分自身がどきたはら・のぶや1988年、日本大学松戸歯学部卒業。1992年、北原歯科医院開業(東京都港区)。2002年、中央区に移転。2012年、東京八重洲に移転し、TEAM 東京 ノブレストラティブデンタルオフィス開設。現在に至る。のような歯科医師になりたいのか、またどのような歯科医療を患者さんに提供したいのかをイメージし、目標を設定することでやるべきことが明確になります。そして、歯科医師だけでなく歯科医療従事者である以上、生涯学び続けていく姿勢が求められます。 グローバル化が進むなか、今回同じく会員に選出された米国在住の歯科技工士・林 直樹氏のように、海外で活躍する日本人の歯科医療従事者も増えています。すばらしい技術をもっている日本の歯科医師の先生方はたくさんいますので、ぜひとも積極的にチャレンジして日本から世界に発信してほしいと思います。 最後に、今回の結果が少しでも若い歯科医師の先生方の意識改革の一助になれば幸いです。堀執行部の会務運営に注目したい。 今月のニュース政 治 9月14日(木)、ホテルニューオータニ(東京都)において、日本歯科医師会(以下、日歯、堀 憲郎会長)の役員就任披露パーティーが開催され、歯科医師会関係者のみならず歯科医療関係者、医療関係者、国会議員など約700名が参集した。 柳川忠廣副会長による開会の辞ののち、日歯を代表して堀 憲郎会長による挨拶が行われた。堀会長は挨拶の中で、急激な少子高齢化にともなう国民皆保険制度や社会保障制度の維持が懸念される危機的状況であることに触れたうえで、その状況を克服するために、歯科として口から食べて話すという日常生活の基本となる機能を人生の最期までまっとうするための役割を果たすべく、数多くの情報を発信してきたことを強調。このたび口腔保健の充実などが国の政策に盛り込まれ、さらに推進されていく結果となったことに対して、関係者をはじめ国会議員に感謝の意を示した。最後に、「地域包括ケアシステムの中でしっかりと責任を果たしていきたい」と述べ、関係者へのさらなる支援と協力を求めた。 来賓挨拶では、高木美智代氏(厚生労働副大臣)、鈴木俊一氏(東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣)、小野寺五典氏(防衛大臣)林 芳正氏(文部科学大臣)、岸田文雄氏(外務大臣)、野田聖子氏(総務大臣)など数多くの国会議員が駆けつけ、2期目となる堀執行部の役員らを激励した。 会場では、同日開催された第186回臨時代議員会で議長に選出された芦田欣一氏(滋賀県歯科医師会会長)による乾杯発声の後、華やかな祝宴が催され、多数の参加者で賑わいを見せた。最後に佐藤 保副会長による閉会の辞で幕を閉じた。役員就任披露パーティーが約700名を集め盛会日本歯科医師会

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