デンタルアドクロニクル 2011
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巻頭特集 18卒後研修が歯科免許更新の条件 「歯科医でありながら、職業能力の向上に努めることを怠る者がいるとすると、それは社会に対する大きな背信である」という保母須弥也先生の言葉は重くかつ潔い、けだし名言であるといえましょう。 アメリカにおいても、歯科における卒後教育の重要性はもちろん十分に認識されていて、歯科免許更新時(後述)には一定時間以上の卒後教育を受けていることが求められています。 カリフォルニア州を例にとると、2年間で50時間以上の卒後研修を受けた証明書を提出しなければ、歯科免許の更新はできないのです。このため、アメリカの歯科医の卒後教育に対する意識はとても高く、質の高い研修を求めてさまざまな情報交換がなされています。こうした事情があるため、卒後教育を提供する側も、歯科医の真摯なニーズに応えようと、競って質の高い研修を提供するという好循環が成り立っているように思います。 日本においても各種講習会が花盛りで、わが国の歯科医の向学心がかつてない高まりを見せていることは、大いに喜ばしい状況だと思います。ただその一方で、卒後教育の受講が、もっぱら各人の「自主性」に任せられていること、そして長引く不況の影響で、卒後教育に投資できる経済的・時間的余裕がなくなっている歯科医が増えていることは、けっして看過できる問題ではないように思います。 とくに若いドクターが、適切な卒後教育を受けることがなく(したがってその重要性を認識することなく)、中堅のドクターになっていくようなことがあるとするならば……、遺憾ながらわが国の歯科の前途はイバラの道といわざるを得ません。 ここでは、アメリカの歯科教育の現場から、学部教育・卒後教育の現状についての報告を行いますが、わが国の今後の卒後教育のあり方を模索する上で、わずかでも参考となれば幸いです。アメリカにおける学部教育 アメリカでは歯学部(4年制)に入学する前に、4年制一般大学に入学して歯学部入学に必要な単位をとることが求められます。つまり、18歳で高校を卒業した後、順調にいけば22歳で4年制大学を卒業、そして26歳で歯学部卒業ということになるわけです。 もっとも、実際のところは卒業時の歯学部生の平均年齢は30歳くらいなのではないでしょうか(このため結婚はもちろん、すでに子供が何人かいるという学生も少なくありません)。これは「一般大学を卒業した後しばらく働いていた」「大学の途中で専攻を変えた」など、さまざまな理由があるのですが、この「歯学部生の年齢が総じて高い」ということは(賛否両論ありますが)、私はけっして悪いことではないと思っています。 彼らの多くは、年相応に精神的に成熟しており、なによりも「20代半ばを過ぎてそれまでのキャリアを捨てて(多くの場合、家庭に負担を強いてでも)歯学部に入ってくる」という勇気あるチャレンジャーであり、したがってしっかりとした目的意識をもち、向学心もきわめて高いからです。 歯学部のカリキュラムも、彼らの旺盛な学習意欲に応えるようによく練られ、組み立てられており、歯学部教育の核となる臨床実習は2年生の後期から早々と始められ、以後、卒業までできるだけ多くの患者を治療する機会が学生に与えられていま清水 藤太 しみず とうた1993年鹿児島大学卒業。保母須弥也に師事し局部補綴学を修める。1998年にロサンゼルスの南カリフォルニア大学(USC)大学院に入学。大学院卒業後は臨床准教授に就任し、以後現在まで大学院生の臨床指導に携わっている。2001年にはカリフォルニア州歯科免許を取得し、ロサンゼルスにて開業。2008年よりUSC歯学部PPC理事として「USCジャパンプログラム」を主宰、「アメリカの大学による日本の歯科医のための卒後教育」に取り組んでいる。アメリカにおける研修事情南カリフォルニア大学歯学部臨床准教授ロサンゼルス開業Tota Shimizu, DDS 清水 藤太

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