デンタルアドクロニクル 2011
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歯科研修・セミナーで学ぶ9す。こういうわけで、卒業時には、学生たちは「3年間の臨床経験を経た即戦力のドクター」として社会に旅立っていくのです。アメリカにおける卒後教育 前述のように、アメリカの歯科医師免許は更新制(カリフォルニア州では2年ごと)であり、ほとんどの州で、免許更新時には過去2年間で最低50時間以上(歯科関係法規・感染対策2時間、救急救命法2時間含む)の卒後研修を受けたことを証明しなければなりません。つまり、アメリカのすべての歯科医は、その生涯にわたって、毎月最低2時間以上の質の高い卒後研修を受けているということになり、これがアメリカ歯科界の基礎体力になっていることは間違いないようです。 講習会のバラエティさは日本と同様、期間は1日コースから数ヵ月単位のもの、内容もインプラント、補綴、ペリオ、エンド、義歯と多岐にわたっています。 研修の主催者も、スタディグループ、著名な臨床家、企業などが主になることは日本と変わりありませんが、アメリカの場合、歯科大学が積極的に卒後研修を主催していることが一つの大きな特徴でしょう。 ここロサンゼルスでも2つの歯科大学、南カリフォルニア大学(USC)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)が毎週、何らかの卒後研修を開いています。世界に冠たるこの2つの歯学部の教授陣の講義を、手ごろな受講料で週末ごとに受けられるということは、地元の歯科医にとって本当に幸運なことだと思います。 ロサンゼルスの歯科のレベルが高く、市民が高い水準の歯科治療を享受できるということには、USC・UCLA両校の卒後教育へのコミットメントが大いに貢献していることを考えると、「社会への貢献度」という観点からは、学部教育よりもむしろ卒後教育のほうが重要なのかもしれません。 日本でも、東京医科歯科大学や明海大学らが質の高い卒後研修を頻繁に主催していることは、大変素晴らしいことだと思います。他の歯科大学は、同窓会が年に数回の講習会を開くにとどまるところが多いようですが、「教えることは教わること」̶̶大学教官も百戦錬磨の開業医を相手に講義をすることで、学生相手とは違う、高い次元のフィードバックを得ることができて、大いなる刺激となるはずです。わが国の諸大学の卒後教育への一層の意思表示を大いに期待したいところです。日本の若い歯科医への提言 卒後教育は、学部教育とその様相をまったく異にします。 卒後教育は、基本的に自学自習である以上、そこには受身の学部教育では必要なかった能動性、すなわち「自分の人生に自分で働きかける力」が求められます。 そのためには、チャレンジすること、あきらめないことといった「しぶとい生命力」を持つことが大いに重要になります。低き・易きに流れるのは人間の常で、「無理して金を出してまで勉強しなくてもいいじゃないか」といったささやき、迷いは常につきまとうものです(その意味で価値観や志を共にする「同志」の存在は、卒後教育の効果を上げるうえできわめて重要です。優秀な歯科医には例外なく「同志」がいます)。 日常の臨床においても、「何が重要かを見極める能力」「常識を疑う確かな力」を持ち続けることが大切で、さもないと治療が惰性に陥ってしまい、チャレンジする気力も減退してしまいかねません。 IT技術に遅れをとらないこと、国際化に対応するため語学力を伸ばすことの2点も、プロフェッショナルな職業人のマナーとして、必須条件でしょう。 「成功した歯科医」とは、キャリアの早い時期にこのパラダイムシフトに気づき、かつ対応できた者のことです。 「自ら目標をつくり、自らリスクをとり、自らの行動を決断する(小宮山宏東大総長)」̶̶いきいきとした生命力を持つ若い歯科医が、わが国に増えてくれることを大いに期待しています。

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