デンタルアドクロニクル 2012
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巻頭特集2 ■ 対談:「8028D」で高齢者に「噛める」喜びを! ~保険適用の総義歯製作講習会を全国で展開!~「8028D」の「D」はデンティストリー河原 まずお断りしておきたいことは、日本歯科医師会が展開してきた「8020」運動(80歳で歯を20本残そう)は、ものすごく大事なことで、それに異論を唱えているわけではないということです。ただ、日本人の60歳以上の人の残存歯は20本以下というデータがあるくらい、「8020」に達していない方が世の中にあまりにも多いのも事実です。たとえば80歳で20本の歯のない人、場合によっては60歳で5本しか歯のない人などがたくさんいます。こういう人たちは「8020」はもう関係ないといって、取り残されてしまっているのです。 こうした「8020」から落ちこぼれてしまった人を救う方法はないかと思ったときに、私は「8028D」の必要性を強く感じたわけです。「8028D」(D=Dentistry)とは、歯科の治療を受けて(クラウンであれ、ブリッジであれ、デンチャーであれ)28本揃った歯で、しっかり噛める口腔環境を作ろう、そして何でも美味しく食べて、元気に過ごしてもらいたい――これが「8028D」運動の骨子です。 かつて福岡市で開業していたときは、インプラントだ、審美だと最新の歯科医療を提供して、患者さんに喜んでもらおうと頑張っておりました。しかし、大分県の佐伯市に移って開業したら、高齢者で無歯顎患者があまりにも多く、それもほとんど保険でやってくれという患者さんばかりです。ません。コンダイラータイプの咬合器は、前方運動を可能にしてくれます。 また、臼歯の排列には上顎法と下顎法があります。私は、人工歯の咬頭傾斜角が20度の人工歯を使用していますので、上顎法で排列しています。FOP角を考えると、前方フルバランスドオクルージョンがうまく与えられると思います。河原 フルバランスドオクルージョンは、どこで噛んでも歯は当たっています。前歯でものを噛んだときも、奥歯も接触するんです。一般的に入れ歯は、前歯で噛むと奥歯がポトッと外れてしまいますが、フルバランスドオクルージョンを与えると、前歯で噛んでも、奥歯が外れない入れ歯ができます。前歯で噛める入れ歯の特長です。 ちなみに、犬歯誘導によって歯を横に動かしたときに、犬歯が当たれば、他のところは全部外れるんです。外れることによって、力が他の歯にかからないように保護するわけです。あるいは、前歯で噛んだときには、奥歯が少し空いている状態で臼歯部を保護する、これが有歯顎の咬合です。 総義歯の咬合で、フルバランスドオクルージョンにすると、どこで噛んでも歯が当たるんです。若い先生たちには、このことが十分理解されていないようです。大学では教育されていると思いますが、総義歯学の人の多くはインプラントの勉強に走ってしまっていて、総義歯をやる人が少なくなっているのではないでしょうか。 ですから、改めてもう1回、世の中のために総義歯で何でも噛める、それも保険適地方では、みんながみんなインプラント治療を受診できるわけではないし、自費の立派なデンチャーを入れられるわけではありません。私は完全保険医ですから、保険で何とか楽しく食べられるような入れ歯を作るしかないと考えるようになったんです。 1972年にアーニー・G・ローリッツェン先生のフルバランスドオクルージョンの咬合を学び、ずっと行ってきたのですが、それを単純化して保険の中へ適用したら、患者さんが大変喜ぶようになられて、「これはもう少し世の中に広げたら、患者さんが幸せになるな。歯科が元気になるな」と思い、「8028D」を提唱し始めたのです。 YDMの坪根式咬合器(コンダイラータイプ)を豊田先生が改良されたのがスペイシー咬合器で、これに私がネジをつけただけですが、今、販売されているスペイシー咬合器:スマート(写真)です。この咬合器は、フルバランスドオクルージョンの咬合が簡単に与えられるのです。歯科技工士の松岡先生には、この咬合器を使って排列をしてもらっていますが、従来のいわゆるアルコンタイプでは、犬歯誘導の咬合は与えられるけれど、フルバランスドオクルージョンがうまく与えられないのです。松岡 普通のアルコンタイプは、側方の調整はできるのですが、前方がなかなか難しいんです。スマートのように前方調節ネジがあると、1ミリ単位で調整ができます。ですから、前歯と臼歯がきれいに並び、とくに前方運動がきちっとできます。それがアルコンタイプですと、あまりきれいにでき河原英雄先生は「8028D」運動を提唱され、そのために保険適用の総義歯製作のミニ講演会を全国的に展開されていますが、どんな動機からそうした運動や講演会を行っているのか、また噛める総義歯を製作する上で、何がポイントになるのかなどについて、三十数年来、一緒にコンビを組んでこられた歯科技工士の松岡金次先生と対談していただき、若い歯科医の方々に、美味しく噛めて、患者さんに喜んでもらえる総義歯の必要性をアピールしていただくことにしました。総義歯が、歯科の明るい未来を切り拓き、歯科界を活性化させる、大きな力になるはずです。 (編集部)「8028D」運動で、高齢者に「噛める」喜びを!保険適用の総義歯製作講習会を全国で展開!22

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