デンタルアドクロニクル 2012
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巻頭特集2 ■ 対談:「8028D」で高齢者に「噛める」喜びを! ~保険適用の総義歯製作講習会を全国で展開!~河原 私が松岡先生のことを話し出したのは、ほんの最近です。まだ2名ですが、若い先生が技工作業を頼み出したんです。これからも、頼む人はいると思いますが、そのときには「あなたたちは勉強と思って保険でやりなさい、彼には保険外の自費の技工料で、自費の排列をしてもらって学習しなさい」ということにしています。やはり違いがわかりますからね。松岡 河原先生と初めて仕事をしたときのことです。上顎前歯をビーバー(中切歯2本を強調する排列)で並べているのですが、最初は中切歯がハの字になってしまい、河原先生に「歯根を考えろ」といわれたときは、頭をガンとハンマーで打たれた感じでした。歯しか見てなかったんです。先生は「歯根まで考えて並べろ」というのです。河原 よく覚えているね。歯は根と根が当たらないでしょう。根を想像しながら並べると、歯が自然に見えるんです。松岡 最初は「そんな歯はないぞ」といわれましたね。河原 お互いにないものを持って尊敬し合うとはいうけれど、これがなかなかできないんですよ。しかし、私から技工士さんを裏切ったり、だましたりすることは絶対にありません。常に自分にないものをちゃんとやってもらいたいから感謝しています。お互いに感謝することが、いい入れ歯を作る前提です。 よく田舎のほうに行くと、口の周りがぺっこり凹んだおばあちゃんやおじいちゃんがいますが、あれは入れ歯を入れていない場合もあるし、入れ歯を入れても顔にマッチングしていないからです。それは、入れ歯を作った歯科医の美的センスもあるけれど、噛み合わせが低いとか、歯が妙な排列になっているなど、いろいろ原因はあります。解剖などいろいろなことを勉強すれば、ちゃんとした入れ歯が作れるんです。スマートという咬合器は、前方運動が、いわゆる矢状顆路が30度、側方顆路が7.5度を平均で与えているので、これを使いこなせば、だれでも噛める入れ歯ができます。その辺は、松岡先生が詳しいから、少し専門的になるが、説明してもらいましょう。松岡 オプションで咬合平面板があって、バルクウィル角が20度で設定されているのですが、このバルクウィル角は、ボンウィルの三角に対して、咬合平面との角度が20あるんですよ。ポーセレンの色一つでも何でもそうです。今はあまりにもラボに頼りすぎて、患者さんが何か文句をいえば、ラボが悪いような顔をしたりする。CAD/CAMなんか出てきて、あれはあれですごく大事なことだけど、やはりいいものをつくるときには人間の手を動かして、人間の手を通るとさらによいと思うのですが、私が古い人間ですかね?松岡 といって、総義歯というと、昔なら名人上手がいて、その人だけができるというのでは困りますからね。誰にでもできるやり方で、河原先生のおっしゃるような噛める入れ歯の製作を広めていくことが大事なんでしょうね。河原 私と松岡先生は、もういい歳だし、いま歯学部の教育でもほとんどないらしいから、本当にわかりたい人に伝えようじゃないかということで、実は総義歯製作のミニ講習会をやりたいと思っているんです。それで「8028D」が可能になれば、それまであまり咀嚼できなかった人が、1人でも多く咀嚼できるようになるわけです。松岡 そうなれば、患者さんも歯科を見直してくれると思うんですね。今は、歯科医院で入れ歯をつくってもらったのに、まったく噛めないからといって、3つも4つも持っていらっしゃいますよね。だけど、本当に噛める入れ歯ができたら、患者さんが歯医者さんを見直すと思うんです。そして、医療費のムダを削減できるのです。河原 もっというなら、「患者さんが少ない」といってグチっている歯科医は、十分時間があるでしょうから、お年寄り1人に対して一生懸命噛める入れ歯をつくったら、お年寄りは老人クラブなどで、ものすごい情報のネットワークを持っていますから、患者さんがうわーっときてくれます。 今、多くの歯科医院では、患者減で大変だといいますが、何らかのアクションを起こさないと、患者さんは戻ってはきません。日本歯科医師会がおかしい、厚労省が十分理解していない、点数が低いなどと不満をいっているだけでは、患者さんはきやしませんよ。歯科医院に行っても噛めない入れ歯を作ってくれる、何か不満をいったらインプラントを勧められるだけではね。インプラントはインプラントでいいものだけれど、みんながインプラントできる世の中ではないですからね。ですから、診療報酬が度ということなんですね。カンペル平面と咬合平面が平行に設定されていますので、バルクウィル角が20度なら平行ですから、カンペル平面とボンウィル三角平面も20度になるんです。 顔面の水平面でフランクフルト平面があるのですが、フランクフルト平面に対してカンペル平面の角度の平均値が11.3度です。その11.3度と20度を合わせれば、この矢状前方顆路が31.3度になる。すると、その平均値の30度に合わせれば、矢状前方顆路の角度を1.3度下げたことになります。 すると、フィッシャーのアングルが、矢状前方顆路を1度下げれば、ベネット角度が5度上がるんです。そこで、1.3度に5を掛けたらベネット角は6.5度になるんですね。前方顆路が30度になれば、ベネット角は6.5度になります。しかし、ボンウィルの三角の前方点は、下顎の中切歯近心切端なんです。咬合平面板を使うのは上顎平面ですので、上顎三角を考えると、角度がわずかに変わると思います。ですから、このスマート咬合器は、平均値の矢状前方顆路30度、ベネット角7.5度になっています。そのため、咬合器に模型をマウントするときは、咬合平面板か輪ゴム、フェイスボーで正確にマウントする必要があります。河原 昔、保母先生がナソロジーを日本に持ち込まれた数年後に、アメリカのナソロジストのローリッツェン先生が来日されて、その頃、私たち若い連中は、ベネットムーブメントなどについての小難しいディスカッションがすごかったんです。 30年以上前に、私と松岡先生も、フィッシャーアングルと矢状顆路などについて、がんがんディスカッションし、必死になって手を動かしていたわけです。ところが、今はそうした議論も何もありません。これでは患者さんが幸せになれんと思ってね。これはお金のかかることではないし、特別な技術が要るわけではないんです。この理論を知ることが大事で、そして咬合器を熟知して使うことが大事なんです。松岡 今は技工士さんも知らない方が多いと思います。昔、私はフィッシャーのアングルを習っていたものですから、矢状顆路とベネット角度の違いとか、簡単に計算できるんです。河原 若い先生にその話をしても、何もわからない。昔はみんな真剣にやった時期が24

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