デンタルアドクロニクル 2012
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徳を積んでいた徳人が、最終的には多くの人から敬愛され、信頼されるという結果になります。 目先の収益を求め、合理的・科学的に才を使って運営する医院では、長い間には患者さんがだんだんと遠のいていってしまうのです。 一見、非合理で損なこと、非能率でムダなことに映るかもしれませんが、常に患者さん側の立場に立ち、心をこめて“徳積み行為”をする医院のほうが、長い間には“信者”ともいえる固定のリピーターがついてきます。欧米式医院から日本式医院に 欧米式の経営はひと言でいうと「機能的」「合理的」「効率的」に“利益を追う”というスタイルをとります。 日本的な経営の考え方は、利潤は「お客様(患者さん)に尽くしたご褒美である」と考えます。ですから、「利益が上がらない」と嘆く前に「自分たちの患者さんへのご奉仕の至らなさを反省しましょう」ということになります。 この「ご奉仕」を「サービス」と訳してしまうと、「医療機関なので“物”をサービスしたり、“金”を値引きしたりはできない」という先生がいます。しかし、これは“物理的なサービス”のことを語っています。また「われわれは技術を高めて、高度医療を推進すべく機械設備を整え、スタッフのスキルを上げるよう努力している」という先生は“機能的サービス”を語っています。今や時代は“心のサービス”の流れに入っています。 したがって、世の中では“サービスを超えたサービス”といった言葉が注目されています。日本にはもともと「恕(じょ)」という言葉があり、相手の身になって(患者さんの痛みの立場)、気配り、思いやりを大切にしてきました。ドラマの「赤ヒゲ先生」も「ナイチンゲールスピリット」も、その背後には「恕」の精神があるものと考えます。 今、人びとの本物の心が欠乏し、閉塞感のある日本社会であればこそ、こうした心のサービスに人びと(患者さんたち)の心は惹きつけられ、満足し、感動して医院の信者のような固定リピーターになっていきます。 その人たちは、決まって「あの医院はいいよ」「あの先生はやさしいよ」と語り歩くオピニオンリーダーとなり、口コミで先生や医院の広報マン役をしてくださることになるのです。日本の心のサービスを 日本的医院経営をすすめようとするとき、美しい日本の心を持つことをおすすめします。先生方がスタッフの方とともに、さらなる心の研磨をしていただくため、日本の心について、次に述べていくことにします。 第一は、他人(患者さんや他のスタッフなど)のために尽くす「利他の精神」の心です。「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」と、比叡山を開いた伝教大師もいいました。 第二は「清く、明るく、正しく、直き」の心と行為です。これは、日本古来の“神道の心”であり〝真〟〝善〟〝美〟とともに神様の喜ぶ心です。 第三に親や先生、目上の人を立て、老人や子供へのいたわりや節度ある行動を促した儒教の心(孔子の『論語』の心)で、「忠、孝、礼、節」や「仁(愛)義(正義)礼(思いやりの姿)智(智恵)信(信じ合う)」の心です。 第四は「和」の精神です。これは、ほとんどの日本人が賛同する聖徳太子の「和」の精神です。スタッフ同士だけでなく、患者さんはもちろん、地域の皆さんと仲睦まじく「連帯感」「絆」を大切にして生きる市いちかわ川 覚かくほう峯法政大学卒業。(学)産業能率大学所属研究所コンサルタント、山城経営研究所常務理事として上場企業の幹部教育にあたる。平成3年より比叡山・高野山などで千二百日間の荒行を重ねる。平成8年より日本の心と日本思想の復興を訴え、多くの支持者を得て日本経営道協会を設立。“経営に心と道を”と運動を推進し、現在に至る。主な著書は『社風革命』『修行千二百日』『いのち輝かせて生きる』など多数。心の豊かさを求めて ―日本的経営の再発見―31

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