デンタルアドクロニクル 2012
8/192

日本歯科医師会会長である大久保満男氏は、会長就任時から一貫して歯科医療は「生きる力を支える生活の医療」と主張し続けてきた。その成果は8020運動の国民に対する認知度や、2011年8月に制定された「歯科口腔保健の推進に関する法律」などを見ても、ようやく実を結びつつあるといってよいだろう。しかしその一方で、一般メディアが取り上げる「歯科医のワーキングプア」「私立歯学部定員の定員割れ」「歯科インプラントトラブルの急増」など、歯科界が解決しなければならない諸問題はいまだ山積している。約65,000名の会員を擁する日本歯科医師会は、日本の歯科界の諸問題に対してどのように対応していくのであろうか。大久保会長にうかがった。歯科医療の本質とは?人々の生活にかかわりながら健康を守る――大久保会長は現在3期目を務めておられますが、自身の活動も踏まえ、歯科医療に対するお考えをお聞かせください。大久保:日本の歯科界が大きく変化を遂げるきっかけになった大きな出来事は、1989年、厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会が提唱した8020運動だといってよいでしょう。この運動は、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という国民の歯と口の健康に貢献することを目的にスタートしたわけですが、当初は「20本以上あれば元気に生活することができる」といったような科学的な根拠がありませんでした。8020運動が始まって7、8年経過した頃から、厚労省からの研究費の助成により、本格的な研究が全国各地で始まり、ここ2、3年でようやく結果が出てきました。たとえば、歯の保存状態と生命予後との関連を検討したコホート研究や、8020非達成者でも義歯が入ってさえすれば病気への罹患率が減少する調査データ、さらには歯を失うと認知症の発症リスクが高くなるデータなどです。また、要介護で寝たきりになったとたんに口腔内が急速に悪化するデータも出ています。 私は2005年に本会の会長に就任する前、当時の静岡県歯科医師会会長の時から「歯科医療って何だろう」とずっと考え続けてきたのですが、約65,000名の会員を擁する日本歯科医師会の会長に就任したことを機に、「私たち歯科医師の仕事をもう1回再確認しよう」ということを提案したのです。 つまり、人間が生活していくうえでもっとも必要な「食べる、会話する」といった2つの機能である歯と口の機能を維持・増進させることができるのは、われわれ歯科医師の役目だということを、国民へ周知させる必要があると思ったわけです。それ以来私は、歯科医療は“生きる力を支える生活の医療”と一貫して言い続けてまいりました。しかし、仲間内では私の考えを理解してくれたものの、外部すなわち国民に向かって歯科医療の大切を発信していくにはどうすればよいのかという壁にぶち当たりました。 そこで、食や健康にかかわる分野の方々、医療、経済、文化、ジャーナリズムを代表される方々など、多方面の有識者によって構成され、今後の歯科医療のあり方を考える会議「生きがいを支える国民歯科会議」を開催し、歯科医療の意義やあり方について議論してきました。2010年11月にはシンポジウムを開催し、国民への情報を発信してまいりました。 これらの取り組みもあって、現在では糖尿病と歯周病の関係や全身の健康と歯周病との関係など、口腔機能を維持することの重要性をアピールする機会はとても多くなりました。ただし、食べることに関しては健常者だけでなく障がいをもつ方も含めたすべての人々が食べ続けるわけですから、人々の生活にかかわりながら食べ続ける人間の口の中を通して、健康をどのように守っていくかが、今後われわれ歯科医師に課せられた使命であり、果たさなければならない義務だと思っています。これから求められる歯科医療とは?「生きる力を支える生活の医療の実現に向けて」大久保満男 おおくぼ・みつお日本歯科医師会会長1966年、日本大学歯学部卒業。2000年、静岡県歯科医師会会長就任後、「8020健康静岡21推進会議」を設置し、同県を歯科公衆衛生先進県へと育てあげる。2004年、日本歯科医師連盟会長を経て、2005年、日本歯科医師会会長に就任。現在に至る。巻頭特集1● 歯科における学会の現状と今後の展望~ 認定医・専門医が日本の歯科界を牽引する~ Quint DENTAL AD Chronicle 2012巻頭特集1● 歯科における学会の現状と今後の展望~ 認定医・専門医が日本の歯科界を牽引する~ Quint DENTAL AD Chronicle 20126

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です