デンタルアドクロニクル 2012
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ついに「歯科口腔保健法」が制定8020の実現に向けた新たなスタート̶̶さて、2011年8月には歯科界の懸案であった「歯科口腔保健の推進に関する法律」(いわゆる歯科口腔保健法)が制定されましたね。大久保:そうですね。「歯科口腔保健の推進に関する法律」が衆参両議院の国会において全会一致で可決されたことは、歯科界にとって非常に喜ばしいことだと思います。この法律は、歯科保健・医療の大切さが国において認められたことの証といえますが、同時にこれは、われわれが新たなスタートに立ったことを意味していると、私は考えています。 たとえば、先ほど述べた8020運動にしても、人生80年といわれる中で歯科は、自分の健康を含めた未来を想像することができるわけです。20歳の成人式を迎えた方に「60年後の人生を口の状況からイメージしてみて」という問いかけが可能であることを意味しています。日々の営みとしての時間が60年積み重なった未来を想像することは他の臓器では困難です。つまり、60年後がイメージできるということは、10年後あるいは20年後をイメージしながら口の健康を通してその若さを維持でき、歯科からヘルスプロモーションを普及・展開させることが可能なのです。 これらは8020の概念によって初めて可能となりますが、人は一人では生きられません。自分の健康、特にみずからの未来のあり方が大切であれば、家族や友人や地域の人々のそれもまた大切です。私は、本人だけではない他者の思い、それが歯科口腔保健法という法律であると考えています。 東日本大震災の歯科保健支援活動で再認識された歯科医療の大切さ――東日本大震災では、歯科医師による身元確認作業や被災地における口腔ケアなど、歯科医療の果たす役割が再認識されましたが、いかがですか。大久保:被災された会員の皆様とそのご家族ならびに関係者の方々には衷心よりお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 被災地における身元確認作業に従事された全国の会員の先生方には、あらためて敬意を表したいと思います。また、数多くのメディアでも取り上げられました被災地での歯科治療や口腔ケアなどを通して、社会保障の重要性をあらためて感じた歯科医療従事者も多いことでしょう。 被災地の「復興」については、今後長期化が予想されることはいうまでもありません。現在は復興資金が投入されていますが、被災地に住んでいる住民がまず健康でなければ被災地の復興などはあり得ません。現地に住む住民がまず健康であってこそ再建できるわけですから、住民の健康をきちんと支えるようなコミュニティを作っていかなければならないと思います。したがって、医療や福祉は街づくりの中心になってくると私は思いますし、今回被災された地域は高齢化率も高いので、在宅歯科医療を含めて歯科が果たす役割は大きいと思います。日本歯科医師会の社会貢献活動「TOOTH FAIRYプロジェクト」̶̶日本歯科医師会の社会貢献活動の一環として展開している「TOOTH FAIRY(歯の妖精)プロジェクト」はどのようなプロジェクトですか。大久保:本会は2009年6月より、日本財団と歯科撤去物(金やパラジウムなどを含む金歯や義歯など)のリサイクルによる社会貢献活動「TOOTH FAIRY(歯の妖精)プロジェクト」に取り組んでいます。 本プロジェクトは、抜けた乳歯を妖精がコインに交換してくれるという欧米の言い伝えにちなんだもので、会員の皆様が患者さんの協力によって不要になった歯科撤去物を回収、換金してミャンマーの山岳地の学校建設や、国内の小児がん治療の支援などに役立てています。現在では4,042の歯科医院が参加しており(2012年1月23日現在)、換金総額も2億5,782万1,131円(2011年9月8日現在)となりました。その金額をもとに、最近では、小児ホスピス「海の見える森」(神奈川県大磯市)のほか、小児がん施設「チャイルド・ケモ・ハウス」(兵庫県神戸市)の建設を進めています。――最後に、歯科医療従事者の読者へメッセージをお願いいたします。大久保:歯科医療の技術はその手段であって目的ではありません。私たちは歯科保健・歯科医療を通して、国民に「食べる、会話する」ことの大切さを広く周知させていくことが必要ですし、その課題が克服できれば新たな歯科医療への道が切り拓かれると確信しています。もちろん、そのためには学会への参加など、生涯研修を通した歯科技術の研鑽に励んでいただきたいと思います。――本日はありがとうございました。巻頭特集1● 歯科における学会の現状と今後の展望~ 認定医・専門医が日本の歯科界を牽引する~ Quint DENTAL AD Chronicle 2012巻頭特集1● 歯科における学会の現状と今後の展望~ 認定医・専門医が日本の歯科界を牽引する~ Quint DENTAL AD Chronicle 20127

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