デンタルアドクロニクル 2013
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巻頭大特集1 歯科医療が目指す「生活の医療」とは8「8020」はなぜ成功したのか?佐々木(司会):「8020運動」は社会に広く浸透し、大きな成果をあげてきましたが、そろそろ次のステップにすすむ時期がきたのではないかと思います。日本歯科医師会の大久保会長はその著書で「生活の歯科医療」という考えを提唱されていますが、この理念は歯科界の二本柱として、「8020」とともに、世界に先駆けて超高齢社会に入ったわが国の歯科医療のバックボーンにしてもらいたいものです。それが歯科医師の存在理由を高めることにつながるのではないでしょうか。 う蝕の治療をする医師としての歯科医師だけではなくて、「キュアからケアへ」とシフトして、超高齢社会の真っ只中で、介護や訪問診療にどう取り組んでいくかなどについて、日頃からいろいろと提唱されてきておられる、安井先生、住友先生、倉治先生のご意見をお聞きしたく、お集まりいただきました。 まず安井先生には、日本歯科医師会と当時の厚生省とが提唱した「8020運動」について、その大きな成果と、今後それをどう踏まえて、新しい理念のもとに歯科医が活動したらいいのかということについて、お話をいただきたいと思います。安井:「8020(ハチマルニイマル)」は、スローガンとしてはかなり定着性があったと思っています。小学校や地域で講演するときでも、まず「8020を知っている人?」と聞くと、だいたいの人は手を挙げるようになってきました。かつてのように「八千二十(はっせんにじゅう)」と読む人は、ほとんどいなくなりました。 ただ「8020」にも反省点があります。それは、20本ないと「ああ、もうダメなんだ」というような意識を持たれてしまう方がいることです。20本ない方の意識づけをどうするのか、これはまだまだ大きな課題だと受け止めていますが……。 実は、私たちが「20本」という表現をした場合、それまでは単に歯の数だったのですが、平成元年に、当時の厚生省の成人歯科保健検討委員会の中で、この「8020」の20本というのは「食べる機能」を持った本数という前向きな考えが出てきたのです。いわば、より健康志向、QOLの向上志向へと、大きな転換が行われたといえます。 「8020」というスローガンと口腔の機能を一体化して考えていくと、歯を失わないようにする、あるいは口腔の機能を失わないようにするという国民の努力の延長線上に、「だから、あなたは幸せになるんだ」「だから、あなたは生活が豊かになるんだ」ということを示していかないとダメなんですね。 80歳で「8020」の達成者と非達成者との間で、医療費はどう違うのかとか、運動能力はどうなのか、栄養の摂取状況はどうなのかなどについて、各種のリサーチを通じて、「歯というのは、生活の中に大きな意味を持っている」という事実を証明してきたことは、大きい変化だったかなと私は思っています。 「8020運動」がスタートした当初は達成者が数%、いっても10%というレベルが、今や38%を超えてきています。しかし、65歳以上が24%という人口構成になった超高齢社会の中で、38%以上の人が20本以上を保っているとしても、やはり身体機能はだんだん衰えていくでしょうし、あるいはケアも自分ではできなくなっていくでしょうから、歯科医師や歯科衛生士の役割がとても重要になってきていることは間違いありません。 そのためにも、新しい時代の歯科医師という感覚を持った人たちが出てきてほしいですね。う蝕の治療、欠損補綴も当然大事ですが、「本数から機能」に目を向けて、患者さんの「新しい人生を」「いい人生を」サポートできる歯科医師や歯科衛生士を養成していかないと、「8020」というすぐれたキャッチが輝きを失ってしまいます。ですから、今「8020」も、大きな曲がり角にあるような気はしています。 現在、新しい健康づくりの方向を国が求めているわけですが、その中で「数値が38%もいったんだから、8020はもういい 巻頭大特集《座談会》「8020」と「生活の歯科医療」を歯科界の二本柱に!安井 利一 (明海大学学長)住友 雅人 (日本歯科大学生命歯学部長)倉治ななえ (日本歯科医師会広報担当常務理事)佐々木一高 (司会/クインテッセンス出版株式会社代表取締役社長)

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