デンタルアドクロニクル 2013
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《座談会》 「8020」と「生活の歯科医療」を歯科界の二本柱に!15入れたら元気になったという話のほうが、私たちは楽なんですよ。逆に、今、歯のある人たちをどうケアするかというほうがよほど大変な話だと私は思っています。歯のある人たちが、歯を失えば、生活の質は下がっていくということを理解していればまだいいのですが、一生懸命頑張って今の生活の質を高く保っている人たちをどうケアするのかという話は大きな問題で、それを解決しないと生活の医療にならないでしょうね。住友:「8020」の重要性を知っているというか、わかる・理解できるレベルはいいけれど、それを理解できなくなった人たちをどうするかが大きな問題なんでしょうね。 つまり、認知症になってしまったとき、そこから歯が残っている人たちのケアをどうするか。倉治:確かに難しい問題ですね。認知症患者さんの口腔ケアには、新しい学問が必要ということでしょうか。昨年、厚生労働省が健康寿命を正式に発表いたしました。 その結果をみると、男性の平均寿命が79.64歳で、健康寿命が70.4歳、つまりその差は約9年、女性の平均寿命が86.39歳で健康寿命が73.6歳ですからその差は約13年あります。この年月が、それぞれ要介護になる可能性の高い年月で非常に長いですよね。これからの日本の課題は、健康寿命を平均寿命に近づけることともいえるのではないかと思います。両者には「これほど差がある」ということを、国民に知らせただけでも意識が変わり、歯と口の健康を守ることが、生活の質を高めるいわゆる「生活の医療」に近づくのではないでしょうか。 健康寿命の男性約70歳、女性約74歳はまさに歯の失われる年齢なんですよね。にもかかわらず女性では86歳まで生きることになるわけですから、この13年間の過ごし方を含め、人生最後の日の直前まで、自分の足で歩いて、口から物を食べるためにも、歯科がお手伝いをしていく。この情報を国民に伝えることが大切だと思っております。今後の展開としては、その意味でこれからは、健康寿命あたりのところをターゲットに絞ることで、「生活の歯科医療」が国民運動になると思うのです。住友:寝たきりは大きく2種類あるといえますね。たとえば、肢体不自由で寝たきりになって、わかっていても自分で口腔ケアができない人たちと、認知症の寝たきりで、わからないで口腔ケアできない人たちがいるわけです。その人たちをどうするか。両方いるその人たちのケアをやっていくわけです。ものすごく大変になりますね。 それから、どのレベルまでやるかです。健常者とはまた違うものになると思います。たとえば、防湿が十分できない状態でも、使用できる水硬性の材料や光重合レジンのようなものをどんどん開発していかないとダメですね。 また、今、一番問題になっているのは、インプラントを入れた認知症の人にどう対応していくか。それも同じことですよ。安井:そうですね。でも、脳神経外科の病棟に行ったら、チューブを交換したり、喀痰吸引したりというのは、みんな保険点数がついています。看護師がやっても点が取れるので、どんどん点が上がっていきます。本来、口腔ケアもそうあるべきです。 そういうインセンティブがないと、人は動かないですよ。国民が高齢化し、口腔ケアを必要としているのであれば、当然そこに点数がついてこなければいけないのではありませんか。住友:ですから、周術期のいわゆる口腔ケアは保険点数として評価されるようになったけれど、先生がおっしゃるように、今まで、そのことを歯科界が気づいていなかった……。安井:歯科医院が、口腔ケアが問題で誤嚥性肺炎になっている人を、いったん自分のところに置いて、それを脱するまでは口腔ケアをしてあげるとか、そういうシステムの変換もあってもいいのではないかと思いますが……。佐々木:それは歯科と医科との共同作業に該当するんじゃないですか。安井:住友先生のおっしゃっている共通用語の問題ですが、やはり現場へ行かないと覚えられないです。授業で聞いても覚えられないこともあります。私たちが最初に乳幼児から1歳半の歯科健診を立ち上げるとき、保健師が使っている言葉でみんな覚えていったんです。たとえば、「アプガーって何だっけ?」「小児科でもあまり使っていないよな?」「そうか。アプガーって、生まれてきたときの状態なんだ」といったように勉強しました。 そうすると、いまの国家試験対策やコア・カリキュラムの勉強は、この超高齢社会の中の教育システムとして本当に正しいでしょうか。実は少し違うと私は思いますが……。住友:私にはこの話は、安井先生と非常に合致します。安井:やはり1回でも経験された人、在宅に行ったことのある先生は、何となく理解できるかもしれませんが、1回も行ったことがなければなかなか難しいと思います。倉治:日歯の広報活動でも、もっと取り上げないといけませんね。佐々木:「生活の歯科医療」というのは、確かに幅が広く、なかなか共通点というのは見い出しにくいのですが、本日ご出席のお三方とも、この超高齢社会においては「生活の歯科医療」の視点が不可欠という点で共通認識となっております。6万有余の歯科医師にわかりやすく知らせるのは、日歯の広報としても大変だと思いますが、ご努力をお願いしたいところです。出版社としても、いろいろな面で支援していきたいと考えております。

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