デンタルアドクロニクル 2013
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人生80年代における歯科医療の実践17いることになります。 このような患者さんは、経口摂取を制限されていることがほとんどです。「口」から食べられないということを、ぜひ想像してみてください。いや、健常者なら普段の生活から食べるということのみを除いた生活を想像してください。なんと味気ない、まさしく「味」のない生活です。 ましてや、ベッドの上が生活のすべての療養者にとって、口から食べられなければ、何が生きている実感なのでしょうか。 たとえ経口摂取が制限されている患者さんであっても、もしかしたら食べられるかもしれないという思いをもって接することが大切です。もちろん、何が何でも食べさせるということではなく、危険は当然回避しなければなりません。要するに、食べることができる可能性を模索し、そのためには何をすればよいのかを考えるのが、専門職の責任であると考えます。 歯科医師の行なう訪問診療には2種類あります。 第1にう蝕や歯周疾患、義歯などへ対応する治療、第2に口腔ケアの実施です。さらに、口腔ケアには器質的口腔ケア(専門的口腔清掃)と機能的口腔ケア(摂食・嚥下リハビリテーションあるいは口腔機能リハビリテーション)があります。 「口」から食べられない患者さん、「口」から食べさせたい家族にとっては、この機能的口腔ケアが大変重要な意味をもちます(図1)。 具体的な方法などについては他書に譲りますが、私たち歯科医療職は単に疾病の治療だけではなく、機能的口腔ケアを通じて患者さんや家族を支援していかなければならないのです。ただし、口腔ケアは歯科医療職だけではなく、患者さんの家族とともに、関わるすべての職種の方々に実施していただかなければ実効はあがりません。 多職種連携の意義は、それぞれの職種が専門的見地から患者さんのニーズをとらえ、その情報を関わる専門職間で共有し、それにより最終的には患者さんのQOLの向上に寄与することです。しかし、今までの歯科医療は、歯科医療職のみで完結することがほとんどですから、他職種の方々と接する機会が少なく、当然ながら接し方も知りません。 また、摂食・嚥下障害に対する教育も不十分であったので、その理解がすすまず、摂食機能療法の実践は一部の歯科医師に限られているのが実情です。そのため、連携の必要性にまで考えが及ばないのです。これまでの教育体系にも一因がありますが、昨今の卒前教育にはこの分野も含まれてきているので、若い歯科医師や歯科衛生士には大いに期待するところです。 実際のところニーズを把握しても、どんな職種が対応できるのか、どこにいるのか、連絡方法が不明など、サービス提供者側の都合により連携がなさ図1 歯科衛生士による人工呼吸器装着患者さんへの口腔ケア(写真掲載は患者さん本人の承諾済み)。

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