デンタルアドクロニクル 2013
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噛める入れ歯をつくることは、超高齢社会における歯科の社会貢献だ!21噛める入れ歯が医科歯科連携を効果的にする 医科歯科連携とよくいわれますが、医師と歯科医が同じ土俵に上がったとき、医師が一番驚くことは、入れ歯を入れているのに噛めないということだそうです。そのため、入院してきた患者さんの入れ歯を、医師サイドが食事のときに外しています。 私たち歯科医は、噛まないと健康は取り戻せないといっています。でも現実には、噛めないから、患者さんも外されても何もいいません。 私たちは、医師なら誰でも注射ができると思っているように、医師は歯科医なら誰でも入れ歯がちゃんとできると思っています。つまり、歯科医イコール入れ歯なのです。ところが、医科歯科連携で同じ患者さんを診るようになると、いかに歯科医のつくる入れ歯が噛めないものなのかと、医師サイドがおどろいているわけです。 今、医科歯科連携というと、その中心はリハビリテーションです。そのリハビリテーションに携わっている人たちが、いくら一生懸命リハビリテーションを実施しても、入れ歯で食べ物を噛めないため、口から栄養がとれないし、脳を刺激しないから、患者さんはちっとも元気になれないわけです。医科歯科連携では、口腔ケアをはじめ歯科が活躍できる分野がいろいろあります。口腔ケアと噛める入れ歯で患者さんのリハビリ効果が高まることもわかっていますから、医科歯科連携には、歯科医だけでなく、歯科衛生士・歯科技工士も、もっと関与できる体制がほしいところです。超高齢社会では総義歯の技術が必須の要件 たしかに日本には、有名な歯科医、入れ歯の上手な先生はおられるが、その方たちはほんのわずかしかいません。ほとんどの歯科医が、入れ歯は採算が合わないといって、力を入れないし、噛める入れ歯がつくれません。 エンドやペリオ、そしてインプラントなどは、この40年くらいでレベルが格段に上がってきましたが、保険の総義歯だけは、私が歯科医になったときとほとんど技術が変わらず、進歩していないのです。とくに若い歯科医の方は総義歯を見向きもしません。これが歯科の元気をどんどん失わせている要因です。 2年前の東日本大震災後の話です。入れ歯が合わなくて噛めないというお年寄りのために、若い先生がボランティアで行って、入れ歯をリベースしてくれたそうですが、そこにいた歯科衛生士さんたちが「歯医者さんが調整してくれたら、なお噛めないようになってしまった」と嘆いていたと聞いています。リベースをよく知らないため、間違っていたわけです。 この超高齢社会では、総義歯の技術が必須です。若い先生には、ぜひ総義歯を改めて勉強していただき、患者さんに満足を与えていただきたい。「保険でできて」「ちゃんと噛める」入れ歯をつくってあげるためには、「噛めなければ、痛ければ、いつでも調整しますからきてください」と、歯科医も噛めるまで患者さんと付き合うことです。その調整も理論に沿った調整でないと噛めませんから、勉強が不可欠です。 保険では採算が合わないかもしれませんが、お年寄りたちはすごい情報ネットワークを持っていますから、1人でも「○○先生は入れ歯が上手ですよ」といえば、どんどん先生のところに患者さんが集まってきます。患者さんの中には、保険ではなく、自費でもいいからもっといい入れ歯にしてほしいといってきます。そうなると、自費だけでもやっていける歯科医になれますし、歯科は必ず元気になります。寝たきりになる前に「噛める入れ歯」をつくることが大事! 総義歯は、CTが必要だとか、特別な手術器具を買うとか、設備などにお金はあまりかかりません。保険の総義歯は、かつて私たちが学生時代に習ったものと、同じ材料で同じステップでできます。もし患者さんがいなくて暇というのでしたら、なおさら暇な時間を総義歯の患者さんに、1週間に1回でも打ち込んでみてください。大きな成果が必ず跳ね返ってきます。 今は、訪問歯科診療だ、在宅診療だといわれますが、患者さんが寝たきりなどになる前に、歯科医がきちんとした入れ歯をつくっておくことが大事なのです。寝たきりの患者さんに往診に行っても、在宅の布団の上でいい印象やバイトはとれません。十分なことができないため、ほとんどの歯科医は、やむを得ず適当な処置をして終わらせています。ですから、患者さんは歯科医に満足していません。とくに在宅診療の場合、介護の人たちの一部が「もう歯科の在宅はいいです。こないでください」といっているくらいです。なぜならきてもらっても、噛めない入れ歯では食べ物も食べられないのですから……。 「転ばぬ先の杖」で、寝たきりになる前に、きっちり総義歯をつくっておけば、倒れてからも口から栄養をとることができ、元気になることができます。そうすれば、そもそも寝たきりなどにならずに済むのです。 そのため、私はここ数年、「8028D」(D=Dentistry)運動を提唱し、高齢者に噛める喜びを与える、保険適用の総義歯製作講演会を全国で展開してきました。若い先生方に噛める入れ歯をつくって、超高齢社会という歯科のビックチャンスを生かし、社会貢献を果たしていただきたいという想いからです。その芽も次第に大きくなり、近い将来、大きな果実をもたらせてくれることを願っています。

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