デンタルアドクロニクル 2013
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今や、健康志向の中心は歯科にあり 最近の健康志向の高まりは、生活にゆとりを持った先進国に見られる現象ですが、日本も例外にもれず、「健康」の二字は、キーワード化され、テレビ・雑誌を問わず、各メディアで広く喧伝されています。 こういったテーマは、過去においては健康雑誌やせいぜい週刊誌で面白おかしく、興味中心の話題として取り上げられる程度でした。しかし、昨今の取り扱いは一変しています。専門家を動員し、最新の知識を解説し、本当に読者や視聴者のニーズに応えようとする懸命の努力が、画面や誌面によく表れています。とりわけテレビでの取り組みは、もともと健康に関心の高い人びとはもとより、普通の視聴者をも巻き込んだ、視聴率の取れる人気番組に成長しているほどです。 そんな中にあって、歯科に対する関心も、医科に劣らず高いものがあります。ペリオ・咬合・インプラント等々、数え上げれば限がないほど多様です。国民が口腔内の病に深くかかわりあっている、何よりの証拠です。 1989年から今日にまで、日本歯科医師会主導のもとに展開されてきた「8020運動」は、現在では38%の人がそれを達成するまでに至っています。歯科界全体の啓蒙運動が効を奏したといえます。 DMFT指数ひとつとってみても、この10年間に、14歳では平成11年の5.2から同23年の1.3と、もう限界に近いところまでう蝕の発生率は改善されています。わが国の若年者のう蝕予防は完成されたといっても過言ではありません。 ところで、先日一般経済誌『プレジデント』の2012年11・12月号を散見していたところ、大変興味ある記事に出会いました。元来が経済誌ですが、「健康」を特集し、その中で日野原重明先生は「歯の健康を保つことこそ長寿の秘訣だ」といわれています。「歯周病になると、インスリンの活動に障害が生じ、糖尿病の原因になる」と続けられ、ご自身101歳で17本の歯が残っているそうです。さらに、元気で長生きするコツは「まず定期的健康診断を受けること」、これは医科・歯科共通に必要であるといわれています。 同誌では、その他面白い調査がなされています。 「リタイア前にやるべきだった」という調査では、その後悔のトップにあげられているのが、なんと「歯の定期健診を受ければよかった」です。そして、70歳~74歳の人の後悔は、ダントツに「歯の定期健診を受ければよかった」なのです。このように、健康長寿社会を目指せば目指すほど、歯科への期待・関心は高まるばかりです。 本来、医学・歯学はその予防と治療を両輪として成り立っています。歯科においては、若年者層の予防は確立されましたが、中年層以上の予防と治療は満足できるものではありません。 50歳~54歳のDMFTは、平成11年16.9、同23年16.2とほとんど変わることなく、54歳以上になると統計の誤差程度とまったく改善はみられません。これらの統計は、歯科医が今行わなければならないことを如実に語っています。それは、リタイアを迎えた人たちの定期健診と治療です。 従来の「8020運動」において果たしてきた成果の上に、新たに起こってきた問題として、しっかり噛める天然の残存歯と義歯があります。とくに義歯の形は多様化してきています。部分的な義歯、インプラント、デンチャー、さらに義歯床に接着のマテリアルをつけたもの等々です。 いずれの義歯を使用するのも自由ですが、本当に噛める義歯でなければなりません。本来、義歯を作ることは歯科医の中心であったはずですが、少なからず軽視されているように思います。医科歯科連携の必要性がいわれている中で、歯科の予防・治療能力に対して、噛める義歯づくりの能力が衰えているのではないかと危惧しています。 歯科は、生活の医療を支えるものといわれています。「8020」の成功だけに浮かれることなく、600万人超といわれる義歯を必要とする人に、噛める義歯を提供し、満足を与えることは急務といっていいでしょう。しっかりと噛める義歯を入れた患者さんの張りのある顔、介護を受けている患者さんの噛むことからもたらされる健康の回復、これらはすべて歯科医の義歯治療にかかっています。多くの歯科医の方に、「総義歯」の製作は難しいといって敬遠することなく、噛める義歯づくりに挑戦していただきたいものです。 研修中の先生方、若きデンティストの方々、「8020」の先には健康寿命の延長という大きな目標があります。それにはまず、患者さんを満足させる噛める義歯を作ろうではありませんか。2013年は、再び義歯に光を当ててみていただきたいと切望します。 クインテッセンス出版株式会社 代表取締役社長 佐々木一高36

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