デンタルアドクロニクル 2013
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中堅歯科医師と業界のトップが語る人を中心としたサイエンスになっています。基礎サイエンスにおいては、日本人も西洋人もアジアの人びとも変わることはないと思いますが、歯の形態や歯槽骨の厚さにおいては、違いが大きいと思いますね。 その点、アジア諸国ではまだ整備されていない基礎データを、日本が十分蓄積しているのに使いこなしてないのは、もったいないことです。大阪歯科大学に行くと、ものすごい量の歯根の標本があって、日本人の歯根の長さや各歯の長さなど全部調べてあります。しかし、それをベースにして治療するとは聞いたことがありません。これは、非常に重要な視点だと思います。 その一方、若い歯科医師あるいは学生を指導するとき、まずアメリカですとサイエンスベースということをよくいいます。米澤先生は、いろいろなところでご指導されていると思いますが、先生が教えるときにはどうでしょうか?米澤 今はペリオインプラントをメインで講義や講演をさせていただくことも多く、そこはサイエンスベースにならないといけないと思います。残念ながら、42歳の私は若くて、長期の予後経過を多く見ているわけではありませんので、「経験によると……」というお話ができません。ですから、どうしてもサイエンスベースとなり、ヨーロッパやアメリカのデータを使うことが多くなります。私は、ヨーロッパのEAOやアメリカのAOやAAPにも行きますが、アメリカの先進的な、人の脚光を浴びるような新しい話題よりも、どちらかというと、ヨーロッパのエビデンスと蓄積されたデータにもとづいた、保守的で地味なほうが好みですね。なぜなら、人を間違った方向に先導しにくいからです。 しかしながら、私の得意分野である咬合・補綴・矯正というのは、なかなかエビデンスベースにならない分野なんです。あってもかなり恣意的なものであったり、評価されないものであったりします。 ですから、講師として「私はこう思う」ではなくて、あくまでも基本はエビデンスベース、サイエンスベースです。その中に、私ならではの考え・思想が入ります。また、それを世界にも発信したいと思っています。とくに私は24時間開業医ですから、基礎研究をしているわけではありません。ですから、エビデンスベースを基本に考えながら、日本人ということも加味して、その中で世界が置き去っている咬合や補綴、そこに矯正や審美といったものをいかに融合して、クオリティの高いものを世界に発信できるかという夢があります。 残念ながら、世界には日本人の出る幕がなかなかありません。EAOでも、日本の大学の先生や著名な歯科医が参加しているのに、講演や発表がほぼありません。一緒にインプラントトラブルの勉強会をしている、野阪泰弘先生は「まだアメリカのほうが、ぽんとチャンスをくれたりするので平等でいい」といわれていましたが、ヨーロッパは閉鎖的で、グループのトップがアメリカやヨーロッパで枠をつくって引っ張ってくれるという形でないと、私のような者が1人切り込んでも、ポスター発表が関の山です。そうした厚い壁は感じるのですが、やはりグローバルで認められるクオリティの高い症例を出して、ゆっくりでもいいからそれを形にしていき、「日本の歯科はこうだ」ということを示すことができればいいかな。ちなみに野阪先生は、今年のAO、オーラルの講演でアクセプトされました。憧れですね。座長 日本の歯科というのは、外国から見るとかなり特殊に見えるのかもしれませんね。臨床家が非常に頑張っているのも特徴的で、この点を非常に高く評価されています。 ただ論文の書き方などがサイエンスベースではないこと、同じ土俵に立っていないことが大きいように思えます。学会が中心になって、矯正で一番の論文はこれ、エンドの論文はこれという出し方で、オールジャパン的にすれば、もっと発信の効果は見えるのでは……。米澤 そうですね。エビデンスベースで考えたとき、「なぜ日本の文献が挙がってこないんだろう?」とふと思うことがよくあります。文献といえば英語ではないですか。日本人の文献だってあってもいいはずです。日本の大学は機能しているはずなのに、なぜそういうデータが日本から多く出てこないのか不思議です。逆に、大学と開業医とが組んで日本人特有のデータを出してほしいんです。でも、そこには高い高い壁がある……。メーカーもディーラーも、先生と同じ目線を持つには?茂久田 大学と臨床家の間に壁があるように、業界の中で先生の目線とメーカーの目線とが違いすぎます。まずは1社でも先生方と非常に近い感覚をもったメーカーがあらわれれば、先40

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