デンタルアドクロニクル 2013
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81(株)松風─2013年誌上シンポジウム「バイオアクティブ機能性歯科材料」を探るて組み込むという独自の技術を開発した。これはS-PRG (Surface Pre-reacted Glass Ionomer)技術と名付けられている。このフィラーは、ポリアクリル酸とフッ素を含むガラス粉末の反応により、表面にグラスアイオノマーセメント相が形成され、内部はガラスコアからなる構造となっている(図1)。このフィラーのグラスアイオノマー相からは、フッ素が放出されるだけでなく、フッ素をリチャージさせることも可能である。またフッ素以外のさまざまなイオンが放出される(図2)ことも確認されており、これらのイオンには表1に示すような多様な効果があるとされている。 このS-PRGフィラーを修復材料やその他の歯科用材料に用いることで、これらの材料は材料周囲の口腔内環境や歯質に対して、再石灰化促進作用、抗う蝕作用、抗菌作用などを示すことが期待される。このような材料を、バイオアクティブ機能性材料と定義することができる。 バイオアクティブ機能性材料= 松風社のGiomer製品 S-PRG技術は、修復材料以外の歯面コート材や裂溝封鎖材料などにも応用が可能であり、松風社ではこれらの材料を総称して、Giomer製品と位置付けている。これらGiomer製品である適切な歯磨剤やフッ化物製剤(図3)を日常的あるいはメインテナンス時に適用することでフッ素をリチャージできるので、低濃度のフッ素が長期間徐放され続ける口腔内環境が保たれるようになる。なお、1ppm程度の低濃度フッ素が初期う蝕の再石灰化に効果的なことは、古くから指摘されているところである1。 単なる修復材料や歯面コート材ではなく、周囲歯質の抗う蝕性の向上、口腔内環境の改善、抗菌作用などを併せもつバイオアクティブ機能性材料は、高齢社会の到来や、より低侵襲の歯科治療を望む人びとの増加、またう蝕や歯周病を慢性疾患として管理していくような歯科医療の需要が高まる状況において、その活用がおおいに期待される。いまだ臨床的なエビデンスの蓄積には至っていないところもあるが、関連の研究も多く行われてきており、これらの結果から、臨床的な効果を予測することは十分可能である。 本企画では、S-PRGフィラーから徐放されるさまざまなイオンに関連して、歯質再石灰化効果を含めた、それぞれのイオンの有するバイオアクティブ機能について、材料学的な見地からその特性を情報提供する機会とした。さらにすでに臨床の場で活用されている先生方からは、歯科保存領域にとどまらず、歯科補綴学さらには一般歯科臨床の見地から、これらGiomer製品の臨床の場における具体的な利用法を紹介していただく。臨床家諸兄の日常の診療に役立てていただける情報となることを期待する次第である。図3 フッ素のリチャージに有効なペースト。メルサージュクリアジェル。表1 S-PRGフィラーから放出される各種イオンと期待される機能。F(フッ素) フルオロアパタイトの生成・抗菌作用 脱灰病巣の再石灰化作用Sr(ストロンチウム) 骨形成および石灰化の促進・耐酸性の向上AI(アルミニウム) 知覚過敏抑制効果Si(シリカ) 歯質の再石灰化誘導(骨組織の石灰化)B(ボロン) 殺菌作用・骨形成促進Na(ナトリウム) 歯質へのイオンの取り込み促進参考文献1. Malgolis HC, Moreno EC, Murphy BJ. Effect of low levels of fl uoride in solution on enamel demineralization in vitro. J Dent Res 1986;65(1):23-29.

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