デンタルアドクロニクル 2013
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87 はじめに う蝕は、口腔内細菌(う蝕細菌)により産生される酸により、歯質が脱灰されることで生じる。その一方で、唾液による緩衝能により酸が中和され、唾液中に含まれるミネラル(カルシウムやリンなど)により、脱灰した歯質に再石灰化が起こる。日常の食生活の中で、脱灰と石灰化がエナメル質の表面で繰り返し行われ、この脱灰-石灰化サイクルのバランスの破堤がう蝕へとつながることはよく知られた現象である。 本項では、この再石灰化にかかわる過程において、歯質強化のためにS-PRGフィラーを用いた材料の応用について考察する。S-PRGフィラーは、多機能ガラスフィラーの表面に、表面改質層とグラスアイオノマー相の2層構造(ガラスフィラーを含めると3層構造)を有し、各種イオンの徐放と物理的強度を併せもつ新しいフィラーである(図1)。 エナメル質の組成 エナメル質は、生体の中でもっと硬い組織である。その大部分が無機質(95%)と1%の有機質、4%の水分を含む。象牙質は無機質が69%で、有機質が20%であり、骨と類似の組成を有することから、いかにエナメル質が高度に石灰化した組織であるかバイオアクティブ機能性材料としてのS-PRGフィラー:その歯質再石灰化能について福本 敏東北大学大学院歯学研究科小児発達歯学分野連絡先:〒980-8575 宮城県仙台市青葉区星陵町4-11994年 長崎大学歯学部卒業2000年 長崎大学大学院歯学研究科修了、歯学博士2000年 米国国立衛生研究所客員研究員2004年 九州大学大学院歯学研究院助教授2007年 東北大学大学院歯学研究科教授、現在に至る各論2OHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOHOHSiOOSiOOH多機能性ガラスフィラー表面グラスアイオノマー相表面改質層S-PRGフィラーから放出されるイオンF-, Sr2+, Al3+, SiO32-, BO33-, Na+ イオン徐放図1 S-PRGフィラーの表面性状。S-PRGフィラーは上記の3層構造からなる。表面改質層は物理的強度が高く、グラスアイオノマー相からはさまざまなイオンの放出が期待できる。

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