デンタルアドクロニクル 2014
19/196

17 私の歩み ―好評書籍の著者が語る“学びの軌跡”― 巻頭特集1授かった言葉の宝物であり、現在の私の臨床に対する考え方や姿勢の原点になっている。 丸森先生同様、現在の自分があるのは菅野博康先生から賜った数々のご指導のおかげである。菅野先生は仙台での治療のかたわら、補綴および咬合を中心に多くの執筆や講演をされており、かねてから多くの歯科医師より慕われ尊敬されていた。私は先生のオフィスに足繁く通い、書籍や文献では解決できなかった疑問に対して目から鱗の教えを賜った。先生の教えは知識の習得や技術の修練に止まらず、「個々の患者の環境や個体差に配慮しながら、過不足ない最良な治療を心がけること」「患者と術者の医療に対する認識の違いを考慮しつつ、疾患だけを診るのではなく人間そのものも診ること」など、ナラティブな面にも及んでいた。さらに、臨床歯科を語る会や日本顎咬合学会への参加、それらを通して全国のすばらしい臨床家との交流へと導いていただき、「臨床論文の執筆や学会講演などの経験は自分自身が一番勉強になる」としてチャンスも数多く与えてくださったことは、今でも感謝の念が絶えない。■ 『補綴力を高める』はこんな書籍 「卒後5~10年の若い先生がはじめて本格的な補綴治療を行う際に読む本。たとえば勤めている先生にはじめて自費の補綴治療を任せる時に、これだけは押さえておいてほしいという内容を執筆してほしい」という依頼があった時に、真っ先に2人の先生の顔が思い浮かんだ。自分なりの解釈ではあるにせよ、2人の先生の教えを若い先生方に伝えたいという気持ちが強く働き、筆が進んだ。 タイトルは『「補綴力」を高める』としたが、具体的な内容は診査・診断に始まりエンド、ペリオ、部分矯正などのさまざまな処置を経て補綴へと至るための、包括的な臨床力を高めるためのマニュアル本を目指したつもりである。■ 20年継続している私の勉強法 およそ20年間、週2回のペースでスポーツクラブにて汗を流す習慣が続いている。ストレス発散とリフレッシュを目的に通い始めたが、汗を流した後のスポーツマッサージやお風呂、サウナの時間こそが実は私の貴重な勉強時間である。その時間に、手掛けている治療やプレゼン内容、講演の構成などのアイデアがふっと頭の中に浮かんでくることがままあるのだ。それはあたかも神の教えに素直に耳を傾けるような不思議な感覚である。浮かんだ内容はすぐにメモに取り、後に口腔内写真などの資料、参考文献と照らし合わせて膨らませていく――。これは20年間、ずっと継続してきた勉強法だ。 さらにもう1つ。写真記録により患者さんの口腔内を客観的に観察し続けてきたことが、現在の自分の臨床の一番の支えになっている。目で見た被写体と撮影された被写体には大きな差があり、“見ている”と“診えている”のは違うことを日々実感させられるが、そのギャップを埋める努力がもっとも効果的な勉強法といえるかもしれない。被写体になってくださる患者さんこそが、勉強のための最高の辞書である。治療に際し、こころよく写真撮影に協力してくださる多くの患者さんに感謝したい。My Learning Curve ̶これまでの歯科医師人生の道のり̶10点5点1985年1990年1995年1998年2004年2007年2009年年0点東北大学歯学部卒業。仙台市内の開業医にて研鑽を積む道を選ぶ。翌年1冊の書籍『私たちの臨床』に出会い感動。その後、故・丸森賢二先生のオフィスを見学。歯科医師としてのやる気が出てきた。ITIインプラント研修会(中村社綱先生)に出席。以後ペリオや補綴に対する考え方が大きく変化した。日本顎咬合学会に初参加。臨床歯科を語る会とともに多くに素晴らしい臨床家との出会いの場となっていった。臨床歯科を語る会にて地元のスタディーグループ「杜の都歯科臨床の会」の活動報告を行う。この時期、自分の診療スタイルに迷いを感じ始めた。日本顎咬合学会の海外研修にてAAEDに参加。Spearらの講演が大きな刺激となった。シロクスの補綴ジョイントセミナーの講師として山口周行先生と出会い、自分の臨床の方向性が再確認できた。日本顎咬合学会のプログラムチェアマンを拝命し、三位一体による「アート・サイエンス・クラフトの融合」を企画。自らの臨床においても、チームアプローチによる過不足のないバランスのとれた治療をより意識するようになった。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です