デンタルアドクロニクル 2014
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21編集部が注目! 2014年 今、この人が熱い! 巻頭特集2 東京都新宿区には、「最期まで口から食べられる街、新宿」をモットーに多職種が集う『新宿食支援研究会』がある。同会の活動目標の1つ、「地域での食支援」の実践部隊である『ハッピーリーブス』で代表を務めるのが、篠原さんだ。 ハッピーリーブスは、新宿区を拠点に歯科衛生士や管理栄養士、理学療法士が在宅療養中の要介護者を訪問し、介護保険の居宅療養管理指導に基づくサービスを提供する、食支援の多職種協働グループである。歯科衛生士である篠原さんは、摂食・嚥下に問題がある患者さんの口腔衛生管理や口腔機能のモニタリング、摂食・嚥下リハビリを担当している。 今ではこのような活動を行っている篠原さんだが、最初から在宅での食支援に目を向けることができていたわけではない。転機となったのは、義歯を新調した患者さんからの予想外の反応だった。 「『義歯を入れてもうまく噛めない』『食べるのに時間がかかってつらい』と言われました。どうしたらいいかわからず、途方に暮れてしまいました」 そこで、勉強会で知り合った先生方に相談したところ、「義歯は口腔周囲の筋肉の動きも合わせて初めて使えるもの。義歯だけ新調しても噛めないのはあたりまえ」といわれたそうだ。口腔機能や摂食・嚥下リハビリに関しても学ぶ必要があると感じた篠原さん。さらに、在宅には食べることに困っている患者さんが大勢いるという実態も見えてきた。 「食事について聞いてみると、『ムセる』『噛めない』『食べこぼす』などさまざまな悩みを訴えられます。食べることに関して困っていても、誰に相談したらいいかわからない方が多いのです」 食べることは、人間にとって最後に残される楽しみだ。しかし中には、機能低下によって食べることを半ばあきらめている人もいる。篠原さんは「口から食べたい」という患者さんの思いに応えることを自身のライフワークにすることを決心し、ハッピーリーブスを立ち上げた。 口腔ケアは日常的に実施されることできちんと効果が現れるため、歯科衛生士の訪問時だけに行われても意味がない。そこで篠原さんは、患者さんのご家族や多職種にも協力を呼びかけている。 「口を通して患者さんの生活を豊かにすることを考えたとき、日々の口腔ケアは欠かせません。ご家族や他の職種の方々にもできる範囲で口腔ケアをお願いするのも、歯科衛生士の役割の1つです」 胃ろうでまったく口から食べられなかったにもかかわらず、食支援のおかげでゼリーを食べられるまで回復し、うれしさのあまり涙ぐんだ患者さん・ご家族もいたとのこと。口から食べることが再び可能になったとき、患者さんは生きる喜びを取り戻せるのだ。こんな光景を見るたびに、篠原さんは歯科衛生士の存在意義について考えさせられるという。 「『食べられる口づくり』こそが、歯科衛生士の専門性を発揮し、多職種にアピールできる強みだと感じています」 超高齢社会に突入した今、患者さんの「食べる」に目を向けられる歯科衛生士が切実に求められている。食支援の必要性について発信する篠原さんの活動は、今後ますます注目されるだろう。Dh. Yuzuki Shinohara篠原弓月(しのはら・ゆづき)東京医科歯科大学歯学部附属歯科衛生士学校(現・東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科)卒業。開業歯科医院で勤務しながら、東京都練馬区で在宅口腔ケアと特定高齢者介護予防事業の委託事業を担当。2009年よりふれあい歯科ごとう(東京都新宿区)に非常勤として勤務。2010年に地域食支援グループ「ハッピーリーブス」を立ち上げ、現在に至る。「 歯科衛生士として、患者さんの『食べる』に向き合っています」編集部が注目!

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