デンタルアドクロニクル 2014
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“学ぶ”“磨く”ためにやるべきこと、やってはいけないこと29あります。それは「懐疑心」を持つことです。 懐疑とは「物事の意味・価値、また自他の存在や見解などについて疑いを持つ」こと。 マスメディアなどの公共性のある機関の情報、権威のある人が語った内容、結果を出した人の書いたことなどを、無条件で言葉どおりに受け入れる人は、意外と多いものです。 たとえば「ゆとり世代は自己中心で協調性がなく、チャレンジ精神や向上心が希薄」というのが、一般的にマスメディアで広く展開されている意見です。 この情報をそのまま受け入れて、ゆとり世代は人材として使えない、価値観が違うので、話をしても理解し合えないという結論を出す経営者もいます。 でも、本当にそうなのでしょうか? 彼女たち(彼たち)は、協調性や向上心が希薄なのではなく、これまでの人生で、共感したいビジョンや、挑戦するだけの価値ある目標に出会ったことがなかっただけだと、私は思います。 事実、いのうえ歯科医院には、ゆとり世代であっても、協調性があって、素晴らしいスタッフがそろっています。これは、たまたま素晴らしい人が採用できたからではありません。 確かに、ゆとり世代は、他の世代とは異なる感覚を持っているように感じますが、だからといって、協調性や向上心を強く持ったスタッフにすることができないかというと、そうではなく、ゆとり世代でも「人財」に育てることはできるのです。 「懐疑的になれ!」というと、「疑り深くなろう」「何でも信用してはいけない」ととらえる人がいますが、それは「懐疑的」でなく、「猜疑的」になることです。 経営の神様と呼ばれた、松下幸之助さんは、色紙を頼まれると、いつも「素直」という言葉を書いたそうです。 また、松下さんは、経営を成功させる秘訣を聞かれたときに、「よく人の意見を聞く、これは経営者の第一条件です。私は学問のある他人が全部、私より良く見え、どんな話でも素直に耳を傾け、自分自身に吸収しようと努めました」という言葉も残しています。 素直な心を失い、猜疑的になってしまっては、どんなに素晴らしい学習をしても、自分を高めることはできません。知識や情報を、まっすぐに素直に受け止め、その上で、知識や情報を文面どおりにとらえることではなく、その本質や背後にある意味・価値を考えていること。そして、別のとらえ方や見解がないかと考えながら、受け止めることが懐疑的になることなのです。■ 学ぶとは実践すること 医療というものは、患者様の健康と人生に大きな影響を与えるものなので、けっして失敗は許されません。それだけに、医療業界の人間は、確実性を好む傾向があります。 新しく、優れた効果が期待できるもののリスクのある治療法よりは、臨床データの豊富な確実性のある治療を選択する――これは、患者様を守るためにも、医院を守るためにも、医師としてベターな選択だといえるでしょう。 しかし、普段の仕事の中で、こうした選択を繰り返しているために、他のことに対しても、医療人はリスクを嫌い、確実性があるものを選ぼうとしてしまう傾向が強いように思います。この傾向が、何かを実践をすることに対するブレーキとなることがあるのです。 知識とは、道具のようなもの。使い込んで、自分の手足のように使用することができるようになって、道具が初めて役立つものになるように、知識も実践することで、自分のものにすることができるのです。 そうした意味で「実践のない学びはない」といっていいでしょう。道具がそうであるように、知識も集めることに価値があるのではなく、実践し、さまざまな経験から学びとることで、生きた知識にすることができるのです。 もちろん、これまでやったことがない内容や、取り組みを始めたからといって、必ずしもうまくいくとは限りません。それどころか、最初はうまくいかないことのほうが多いでしょう。しかし、「未来のリスク」に対する抵抗を超えて、行動を起こさなければ、真に学ぶことはできないのです。 もし、学んだ内容を実行するのに、抵抗を感じるとしたら、それを漠然としたまま放置しておくのはやめましょう。不安や恐怖は、頭の中だけで考えていると、どんどん膨らんでいくからです。自分が感じている抵抗感を、紙に書き出してみる――たったそれだけのことで、冷静に見ることができるようになり、抵抗感の多くは解消されるはずです。 それでも、行動を起こせないなら、不安や恐怖を書き出した横に、不安を解消するために何をするべきか、また最悪の状態になったときに、どうすればリカバリーできるのかを書き出します。そうやって後顧の憂いを取り除けば、行動を起こせるようになります。 すべての人は、素晴らしい可能性を持っています。そして、自分で想像している以上の高みにいくことができる力を持っているのです。多くの人の潜在能力を開発するサポートをしてきた、私がいうのですから間違いありません。 その可能性を生かすも殺すも、学び、自分を磨いていけるかどうかです。自分の可能性を信じ、学び、磨き、素晴らしい人生を歩む人が増えることを願っています。

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