デンタルアドクロニクル 2015
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巻頭特集1-28感染対策はだれのために?̶̶まず、日本の歯科医院における感染管理の現状と、欧米との比較についてお聞かせください。柏井:2003年のロンドン、そしてイエテボリでの留学体験で考え方が大きくシフトしました。 中でも、ロンドンの施設のスタッフと仕事をしていてとくに感じたのが、彼らが「自分の身の安全を確保するために非常に積極的」ということでした。日本では「医は仁術」ということで、ある程度の自己犠牲も容認される雰囲気がありましたが、ロンドンではそうではありませんでした。そこである時、スタッフの一人に「どうしてそこまで自分たちのことを第一に考えるのか?」と尋ねてみました。すると「自分たちが元気で健康でなければ、患者さんに笑顔で接することができない」と言われまして、とても納得したのを覚えています。日本の歯科医院における感染対策のレベルは?̶̶医療行為を受ける側と、施術する側双方の権利を最大限尊重しよう、というコンセプトが感じられますね。では、実際の感染対策のレベルはいかがでしょうか。柏井:全体的なレベルは、やはり海外のほうが進んでいると思います。日本は足踏みしてしまっている状態です。̶̶それは人的なものでしょうか、それとも器材や薬剤の問題でしょうか?柏井:その両方ですね。まず人的な問題ですが、レベルの高い感染対策が必要と分かっていながら、毎日のルーチンワークに忙殺されて実行できていない場合が多いのです。医療は科学に基づいていなければなりませんし、つねに見直しが必要なのですが、残念ながら日常業務に流されている部分が非常に強い。 日本の医療は世界でもまれに見る国民皆保険制度に支えられていますが、その構造上の問題点として1日に多数の患者さんに対応しなければならないことが挙げられます。こうなると、ルーチンワークの中に質の高い感染対策を取り入れることは難しくなってくるのが現実です。̶̶器材や薬品についてはいかがでしょうか。柏井:この2、3年の間に、国内のメーカーや商社から新たな商品が発売されることが多くなりました。国産でも素晴らしい装置ができてきていますし、もちろん海外のすぐれた製品を輸入している会社もあります。器材に関しては、まだ遅れてはいるのでしょうけれど、確実に変わってきていると思います。̶̶ここ数年で、オートクレーブに関してはクラスN、クラスS、そしてクラスBの違いがようやく認識されるようになり、もっとも適用範囲の広いクラスBを導入する歯科医院も増えていインタビュー:歯科医院の感染管理最前線知っておきたい「禁じ手」と医院設計のヒント さる2014年、ハンドピースの滅菌が不十分な歯科医院があることが一般紙の報道により周知されたことから、患者の歯科医院選びに対する意識がいっそう高まっている。また、制度上のさまざまな制約から、欧米諸国にくらべて日本の歯科界では感染対策に十分な予算や時間をかけることができないという声も聞かれる。そこで本企画では、欧米の歯科界での感染対策事情に精通し、講演・執筆多数の柏井伸子氏(ハグクリエイション)に、考えるべき問題点と世界標準に近づくためのヒントをうかがった。柏井伸子(かしわい・のぶこ)1979年、東京都歯科医師会附属歯科衛生士学校卒業、1988年、ブローネマルクシステムサージカルアシスタントコース修了、2003年、ロンドンおよびイエテボリにて4ヵ月間留学、2006年、日本医療器械学会認定第二種滅菌技士、2009年、公益社団法人日本口腔インプラント学会専門歯科衛生士委員会委員、日本歯科大学東京短期大学非常勤講師、2011年、東北大学大学院歯学研究科修士課程口腔生物学講座卒業(口腔科学修士)、2013年、東北大学大学院歯学研究科博士課程口腔生物学講座入学所属:日本口腔インプラント学会、日本口腔感染症学会、日本医療機器学会、日本手術医学会、European Association for Osseointegration Active Member

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