デンタルアドクロニクル 2015
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インタビュー:歯科医院の感染管理最前線知っておきたい「禁じ手」と医院設計のヒント9るようですが。柏井:これも、メーカーによる啓発や広告の効果が現れてきた結果だと思います。ベテランの先生方の中にはそれより低いクラスでも今まで問題なかったというご意見もあると思いますが、科学は進歩するものです。ぜひ検討していただきたいと思います。肝炎の予防にこだわる前に、スタンダードプレコーションを遵守しよう!̶̶先生は、感染対策についていろいろなところで講演なさっていますが、会場ではどのような質問を受けることが多いですか?柏井:とにかく、「肝炎の問題」この一言に尽きますね。医療法が変わって、スタンダードプレコーションに基づいた感染対策が必要にもかかわらず、まだ肝炎だけを特別なものとして捉える向きが多いです。 しかし、実際に「私は肝炎のキャリアです」と申告してくださる患者さんがどれだけおられるでしょうか? 感染に気づいていない、無症候性の患者さんの存在を考えれば、どのような患者さんにも同じ基準で接する、すなわちスタンダードプレコーションの考え方がもっとも合理的です。ですから、肝炎についてのご質問には「肝炎の患者さんと、そうでない患者さんを分ける必要はまったくありません」というお話をしています。ですが、そのレベルはおのずと高いものが求められます。個人防護具、つまりグローブやゴーグル、マスクなどに関しては使い捨てにするのは当然ですし、患者さんの口腔内を処置したグローブでユニットのライトハンドルを持つわけですが、そのライトハンドルは必ずラッピングする、または消毒薬で清拭する必要があります。CDCのガイドラインでは、「血液が付着したところは消毒薬で清拭する」という言い方になっていますが、口腔内には唾液が必ずありますから、体液ということで考えると、唾液の付着したグローブで触るところは、やはり薬剤で清拭する必要があると思います。 また、患者さんがお座りになるユニットをどうするか、というご質問も多いです。具体的にはどのような薬剤で清拭すればよいのか、ということなのですが、その前に拭き方に問題がある場合も多いです。それは何かといいますと、消毒薬で拭くだけで、その後の水拭きを行っていないということです。消毒薬は必ず水拭きが必要で、それを怠ると成分が空間中に揮発し、健康に悪影響をもたらす可能性すらあります。薬剤の選択も重要ですが、その正しい使い方を知っていただくこともたいへん重要です。まずは「頭の中のゾーニング」からはじめよう!̶̶ここまで、人的な問題と器材・薬剤の問題についてお伺いしましたが、それらを活かすための医院の環境や設計も重要だと思われます。まずはオフィスの動線について、アドバイスはありますでしょうか?柏井:これまでに拝見した中でいちばん効率が良いと思ったのは、スウェーデンのイエテボリ大学の実習室のレイアウトです。ユニットが何十台もあるのですが、その真ん中に「ステーション」という部分があって、材料の在庫はすべてそこに置いてあるのです。学生さんたちはそこに材料を取りに行き、チェアのところで使って、そして所定の場所に収納あるいは廃棄するという流れになっているのですが、このレイアウトは非常に無駄がないと思いました。 私は、歯科医院を設計される方たちに、もっと感染管理に関して関心をもっていただきたいと思っています。すでに日本国内でも、滅菌や消毒を行うスペース、いわゆる消毒コーナーを治療室の真ん中に設置した歯科医院がみられるようになりました。そのスペースはガラス張りになっていて、患者さんにもその役割が分かるような掲示がされています。そうすると、患者さんにとってもすごく安心していただ設計の段階から消毒コーナーの役割に着目し、医院の中央に設置した歯科医院の例(麻生歯科クリニック〔静岡県、麻生幸男院長〕)。作業動線の面で有利となることはもちろん、患者に積極的に消毒コーナーを見せることで、安心感をアピールしている。

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