デンタルアドクロニクル 2015
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30巻頭特集2-1 私の歩み ―好評書籍の著者が語る“学びの軌跡”―■ フルバランスドオクルージョンへの疑問から始まった探求の道のり 大学卒業後、すぐに総義歯学と咬合学に興味をもった。今も変わらないことだが、私が総義歯にやりがいを感じるのは、すべての歯を失った口腔内に、三次元的な構造物を新たに構築していく仕事だからである。咬合高径や水平的な下顎位・咬合平面そして審美性と機能を両立する上部構造の構築など、補綴に求められる要素がすべて込められている点が魅力的に映った。さらに若手歯科医師にとっては、治療結果の判断に時間のかかるクラウン・ブリッジよりも、治療の結果、すなわち患者さんの反応が目の前で分かる点も醍醐味として感じられた。 そこで学んでいくうちに、私はまずフルバランスドオクルージョンに対して疑問をもった。それはたしかに顎堤が高度吸収した症例には必要ではあるものの、長期的には機能咬頭が摩耗してしまい、咬合高径が低下してしまうのではないか。いかに総義歯といえども、咬合高径はできるだけ変化しないほうが良いのではないか。それならば、総義歯もミューチュアリープロテクティッドオクルージョンのほうが良いのではないか……? このように、咬合論を考えるきっかけとしても総義歯は強いモチベーションとなった。■ GDS総義歯理論を確立するまでの経緯 こうしたことから、私にとってまず最初に解決すべき課題は咬合高径ということになった。そこで26歳の時に、市波治人先生(歯科技工士・森歯科技研)による咬合に特化した総義歯のコースを受講することにした。なぜ市波先生だったのかといえば、当時私が勤務していた歯科医院の先生が市波先生のコースを受講して製作した市波先生考案のスプリントを装着したところ、私の喘息がその日から止まったという経験をしたからである。本当にこのスプリントだけで喘息が治ったかどうかは分からないが、咬合の全身に与える影響を体感することができ、ますますこの道を追究するきっかけとなった。市波先生のコースでは咬合高径の考え方はもちろん、総義歯にもフルバランスドオクルージョンだけでなくミューチュアリープロテクティッドオクルージョンを与えうることが理解でき、ものの見かたが変わった。 その次に、下顎運動を規制する下顎頭の動き、ひいては下顎側方運動の方向性などを系統立てて学べるコースはないかと考え、佐藤貞雄先生(前・神奈川歯科大学学長)によるポストグラデュエートコース「不正咬合の概念とその治療」の2年間コースに通いはじめた。そこでは、顎関節の動きと側方歯牙誘導路角の関係性を学ぶことがで松本勝利(まつもと・かつとし)1987年、明海大学歯学部卒業。1989年、医療法人 慈愛恵真会 あらかい歯科医院開業、1998年、スタディグループGDS(Global Dental System)代表。dTi ワールドメンバー、日本顎咬合学会 認定医、明海大学歯学部 生涯研修担当講師、日本顎咬合学会 理事、神奈川歯科大学咬合機能回復補綴医学講座有床義歯補綴学分野非常勤講師。『GDS総義歯の真髄』の著者松本勝利GDS総義歯の真髄●松本勝利:著●320頁 ●A4判●定価:本体22,000円(税別)

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