デンタルアドクロニクル 2015
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口腔ケアとキュアが見えてきた 山岳遭難の記事には胸を痛めるものがあるが、昨今、どういうわけか高齢者の数がめったやたらに多いように思われる。なぜだろう。 思えば1953年、戦後まだ間もない頃、地上最高峰8,848mに立つヒラリー、テンジンはエヴェレストの征服者であり、そのニュースは世界を駆け巡った。この2人の快挙が世界の登山人口をブームにまでも押し上げた。あの頃の少年が定年を迎え、またまた昔の夢を見ようというのだろうか。 山があり、それを征服するには無数のサポーターがいる。目的を達成するための協力こそが、その背景の深さを示す何物でもない。 本気の人にチャンスは巡ってくるというが、口腔ケアに取り組む人びとの本気度がここ数年大いに高まりを見せている。チームワークによる取り組みは、歯科医師、歯科衛生士、医師、看護師、介護士などを一塊とした活動となり、その裾野の広がりは、登山のサポーター群にも劣るものではない。本気の人びとが力を発揮するときである。 口腔内の病気、歯周病とう蝕は歯の喪失と咬合の不全にとらわれて、そのケアとキュアにのみ目が向けられていた。しかし、その後の医科からのアプローチにより、歯周病と糖尿病の相互の悪影響、歯周病菌が気管や肺に誤って入ることで起こる誤嚥性肺炎、動脈硬化と歯周炎のリンク、早産、低体重児出産等々、とめどない歯周病とう蝕の全身疾患との関連はますます深まるばかりである。 ここに至って、歯科・医科のチームは上記の病気群に打ち勝つために、改めて小児、成人、老齢期の方々のケアとキュアに立ち向かわなくてはならない。 山にはそれぞれ個性があるように、口腔ケア、キュアにもその個人にあった方法を考えださなければならない。患者さん個人の望みを、どう取り入れていくかを考える必要があろう。一方的供給型の患者さんに向かう口腔ケアでは、患者さんの協力は得られない。患者さんの望みに沿った需要型のケアとキュアはどうあるべきか考えなければならない。 術者の独りよがりは、時として患者さんには迷惑ですらある。患者さんの年齢層に合った話し合い、時間をかけたコミュニケーションは、患者さんの積極参加につながる。 医学や歯学の本質は、人間共通の原理や原則を見つけることであるが、個人の医学・歯学を見つけることも大切なことである。 クインテッセンス出版株式会社 代表取締役社長 佐々木一高4

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