デンタルアドクロニクル 2016
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24 特別座談会「良い治療」とは何か?1茂久田● 超高齢社会のなか、社会情勢が急激に変化しています。そのなかで、単に歯を残すということでなく、小児から高齢者になるまで患者さんの一生にわたって歯科がかかわることのできるホームデンティストがいま求められています。小児から高齢者までという長いスパンのなかで、小児に目を向けると、たとえば米国では“デンタルホーム”という歯科医療理念が、米国小児歯科学会より提案され、一生涯の始まりにあたる時から歯科できちんと対応していこうという流れがあります。このように歯科医療は患者さんの口腔内だけに留まらず、人生に大きくかかわるものに進展しているのです。 そこで、医院運営のかたちは違えども、地域に密着し患者さんとWIN-WINの関係を構築されているお二人の先生とのディスカッションを通して日本の未来を提案したく思います。次世代の歯科医院経営や歯科医院を組織化する術を学ぶ、そして異業種に学ぶことを目的とした勉強会である康本塾主宰の康本征史先生、全国の歯科医院の学術と経営・教育の両立を目指し、最大限のサポートを行うMID-G主宰の荒井昌海先生より、予防~診療~メインテナンスという学術面と歯科医院の経営の両側面からいろいろなお話をお聞きしたいと思います。教育機関の主宰および歯科医院の医療法人社団理事長という双方のお立場をふまえてお話いただければ大変興味深いです。 さて、医院経営というと、なにかお金儲けにばかり走ることだといまだに誤解する方もいらっしゃいます。しかし、予防システムの構築、人材育成、治療技術と知識、エビデンスの向上など、すべて含めて医院経営の成功につながっていくと考えます。康本● 医院経営の充実なくして、よい歯科医療は提供できないですからね。大儲けせよというのではなく、患者さんが安心してかかれる医院はそれなりのコストがかかって当然なのですから。荒井● 同感です。医院経営と学術・技術向上の両立がまさに必要です。どちらに偏っても患者さんもスタッフも歯科医師も幸せになれないと思います。よい医療を提供するには視野を広くもち、社会情勢も踏まえて手を打っていくことが必要ですね。茂久田● 世界を知り、他業種を知り、そして交流し、自身と医院を高めていくことが必要ですね。たとえば、MID-Gの海外研修はいつも満席のよう茂久田 篤株式会社茂久田商会 代表取締役社長日本歯科用品輸入協会長ですね。荒井● 米国のペンシルベニア大学、ハーバード大学で、新たな歯科医療の形、考え方を学べると好評を得ています。康本● 海外との連携ももちろん重要ですが、国内に目を移すと、大型医科クリニックとの連携、生産管理手法の導入など、2~3年先を見据えた布石を一つずつ地道に打っていくことも重要ですね。口を開けて治療をするだけという時代はもうだいぶ以前に過ぎ去っているのですから。たとえば外来環(歯科外来診療環境体制加算)を届け出ている医院が1割強ですので、国民の生涯にわたっての健康という観点からはこの医院数の増加も望まれますね。茂久田● そうですね。高い技術と質の高い機器・機材、素晴らしいスタッフだけでなく、患者さんが安心して歯科医療を受けられる環境も、この成熟の時代には求められていますね。歯科医院と患者さんとの信頼関係をいかに築くことができるかがキーになってきますね。康本征史千葉県開業 医療法人社団 感・即・動 理事長康本塾主宰

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