デンタルアドクロニクル 2016
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90JAID特集  きている部分もあるかなというようには感じました。その中で、答えが出ている部分と出ていない部分は意識して、日ごろの臨床には役立てているところです。【岩城】編集作業において自分の臨床に落とし込むエビデンスの再認識をすることができたので、よい機会を与えていただいたと思っております。 実例では、70前の女性で、軽い脳梗塞で1年ほど寝たきりだった患者さんが、ご主人とともに来られました。話しかけても反応は薄く、「あー、うー」しか言わなかったような状態でした。下顎前歯部しかなかったのですが、インプラントを埋入して、プロビジョナルが入ると背筋が伸びてくるのですね。しばらくすると生気を取り戻したような顔に変わっていって、反応も早くなってきました。 先ほど鈴木先生の認知症の話もありましたけれども、これからはやはり健康寿命にフォーカスを置いていきたいと再認識させられました。【越前谷】高齢者になると、筋肉の虚弱が顕著に見られてきて、それが歩行の困難さになり、全身にみなぎる力が不足してきます。その中で、咬合中心でしっかり咬むことの大切さを患者さんに説明して、口腔内の虚弱から全身の虚弱に移らないように、そのひとつの手段として、強く咬合力を発揮するところにはしっかりとインプラントを入れましょうと、自信を持って説明できるようになりました。 当然これまでも、きちんと説明をしてきましたが、データ的なことや数値的なことも具体的に伝えられるようになって、患者さんにもすごく伝わりやすくなり、患者さんの心に響く説明が、よりできるようになったと痛感しています。歯科臨床の現場では何をすべきか【川口】10年保証というのがありますが、そのような保証をするより、私たちが持っている知識を患者さんに教育することで、口腔内の問題は歯医者だけの責任ではなく両方の問題だということを理解してもらうことが大切だと思います。 やはり健康寿命ということを考えていくと、一方的に私たちが責任を負うという形ではなくて、患者さんとより深いコミュニケーションをとり、予防の大切さを伝えていきたいと考えます。そうすることで、本来の医療ができる方向もあるのではないかと思います。【長尾】プロビジョナルレストレーションを入れてトレーニングをすることで口輪筋が戻ってくると、口元が日に日に生き生きと変わってくるのを、先生方もすごく感じておられると思います。そのときに、私はちょっとでも「こうしたほうがいいかな」と思ったら、その場でプロビジョナルレストレーションを修正します。口輪筋が上がり、スマイルラインが変わったときに、その場で対応して変化を加えると、患者さんがもっと笑顔になってくれる。そうなることで、患者さんが生き生きとして、より信頼度が上がっていくと思います。【長谷川】プロビジョナルレストレーション装着期間中の口腔周囲筋トレーニングを行うと、ガラッと口元が変わります。特に女性の方などは、自分の老いに頑張って抵抗したいというのがあるので、「トレーニングをちょっと頑張ってみて」と言うと、本当に毎日がんばってしてくれるのです。口輪筋に張りが出て、顔貌もきれいになることで、ただ噛めるだけではない、患者さんの精神的な健康寿命というのは伸びていくのかなと思っています。 古い車では、新しくエンジンだけ変えてもしっかり走らないのと同じで、周辺のトレーニングも中心になるようなこと新井聖範2002年 愛知学院大学歯学部卒業2011年 artistic dental clinic理事長JAID常任理事岩城正明1988年 明海大学歯学部卒業1993年 いわき歯科医院開業JAID会長越前谷澄典2001年 北海道医療大学歯学部卒業2006年 スマイルオフィスデンタルクリニック設立川口和子1978年 鶴見大学歯学部卒業1982年 KLTメモリアル歯科開業JAID幹事

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