デンタルアドクロニクル 2017
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 近年、歯科治療に通院される患者さんは年々高齢化し、認知症や全身疾患が原因で来院はおろか寝たきりになってしまう方が増加傾向にあるようです。 訪問で歯科治療を行ったり口腔ケアをする際、患者さんの口腔内だけではなく、生活状態・既往歴・現病歴・服用している薬の種類・家族背景など診療室での診療時以上に知っておく必要があります。 実際、私が10数年訪問で口腔ケアをさせていただいてきた中で、その重要性と全身状態を知らずに口腔内をさわるリスクについて、もっと学ばなければならないと痛感しておりました。 そのような折に、「JAID訪問歯科衛生士セミナー」を発足して下さったJAID会長岩城正明先生をはじめ、脇田雅文先生、村松弘康先生には大変感謝しております。 第1回目は東京品川カンファレンスセンターにて日本大学松戸歯学部・山口秀紀先生より「歯科衛生士のための全身管理と救急蘇生法」についてお話いただきました。歯科診療時に知っておかなければならない高齢者の特徴、誤飲、誤嚥した際の救急処置、観血処置時に注意すべき内服薬や問診のとり方。午後からは救急蘇生法(AED)の実習、血圧計・心電図の装着方法と数値の読み方など盛りだくさんの内容でした。 第2回目は、株式会社ベネッセスタイルケアの中原達俊先生と安達覚史先生より、介護施設の概要や今後の介護事業の展開についてお話いただきました。午後からは管理栄養士の菊地泰葉先生より、施設に入居されている方の食事事情。驚いたのは実際食事をとっていても、その3割が低栄養を起こしているということです。脱水を起こしたり、嚥下機能の低下、口腔状態が悪く摂食困難で食事量が減るといった原因が挙げられるそうです。 おいしい食事を毎日食べられるのは当たり前ではないということです。しっかり摂食嚥下ができることで、誤嚥性肺炎を予防することができることを学びました。 誤嚥性肺炎を予防するために、私たち歯科衛生士は大きな役割を担うことになります。訪問の場合、歯科サイドからの医療提供だけでは嚥下改善も維持もできません。医師・歯科医師・看護師・歯科衛生士・言語療法士・理学療法士・ケアマネジャー・介護スタッフなど多職種の連携があってはじめてそのかたの「健康」につながります。 2017年予定の第3回目は神奈川摂食嚥下リハビリテーション研究会会長 海老名総合病院歯科口腔外科部長の石井良昌先生に摂食嚥下について。 そして第4回目は介護保険のしくみと訪問診療の流れをむらまつ歯科の村松弘康先生からお話いただき、最後に訪問での歯科衛生士による口腔ケアで必要なこと、実際の口腔ケアの実習を私が担当させていただきます。 今後は今以上に訪問診療が求められ、専門的な知識と技術をもった訪問に特化した歯科衛生士が必要とされてくると思います。コースで学んだ知識は一般治療にも役立ち、全身管理を学びなおす中で歯科治療の役割が大きく広がることを実感しています。JAID訪問認定歯科衛生士1期生から高齢者が「最期まで口からおいしくたべること」に寄り添えるよう学び実践していきたいと思っています。むらまつ歯科歯科衛生士 村松憂華JAIDの新たな活動JAID訪問歯科衛生士セミナーJAIDでは新たな取り組みとして、訪問歯科衛生士セミナーを開始した。高齢化社会における歯科の中でも、とりわけ歯科衛生士の役割が重要となってきている昨今、より専門的な知識をもったスタッフの育成行っている。セミナー参加者である村松憂華氏にレポートをしていただいた。(編集部)JAID特集98

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