デンタルアドクロニクル 2017
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古谷野●昨今、週刊誌をはじめマスコミによる歯科バッシングが絶えません。このような状況のなかで、歯科のエキスパートの先生方は何を考え、日々どのような治療を行っているのかをご紹介いただきながら、若手歯科医師に向けて“歯科の未来は明るい!”とアピールしていただきたいというのが今回の座談会の趣旨になります。 中田先生はインプラント、瀧野先生はペリオ、岡口先生はエンドと、それぞれの専門分野でご活躍されていますが、メーカーの立場から茂久田社長にも加勢いただき、昨今の歯科バッシングに対する皆さんのお考えをお聞かせいただければと思います。中田●バッシングの対象はインプラントに関するものが多いと感じます。週刊誌の記事などを読むと、だいぶ偏った報道がされていると思いますね。はじめは「モラルのない一部の歯科医師が……」という表現だったのが、読み進めるうちに「ほとんどの歯科医師が……」といったニュアンスに変わっていくのです。そういうことを患者さんが鵜呑みにしていると思うと怖いものがあります。ですが、私の周りには記事で取り上げられるような歯科医師は1人もいませんので、私たち自身が1つひとつの臨床をどれだけしっかり行えるかが一番重要だと思いました。瀧野●「週刊誌やTVで見た〇〇という治療をしてほしい」など、患者さんから予期せぬ要望を受けることがあります。私たちは、患者さんがメディアから得ている情報を良くも悪くも予め把握する必要がありますね。 また、ペリオの立場からは、いまだに患者さんから「歯を抜かれた」という表現を使われるのが気になります。歯周病医としては天然歯を残すことに重きを置いていますが、それでも患者さんからすると「抜いてもらった」ではなくて、「いい歯を抜かれた」という意識が強いなかで、インフォームドコンセントの不足など真摯に受け止めるべき部分も多いと思います。古谷野●補綴の立場からは、上顎前歯部の6ユニットブリッジを入れた患者さんが年月を経て「最近ぐらつく」と来院されたとき、支台歯が保存不可能なために、残念ながら抜歯せざるをえないケースがあります。患者さんは6前歯が一気になくなるので大きな喪失感が心の傷となって残るようです。瀧野●ペリオでも、歯周病が重度の場合、はじめは1本の抜歯から、他の歯も続けて抜かざるをえないケースもあります。患者さんからすると終わり茂久田 篤株式会社茂久田商会 代表取締役社長日本歯科用品輸入協会長の見えない恐怖心があるでしょうし、「一気になくなる」という怖さもあるのでしょうね。岡口●歯科バッシングの根本的な原因は、歯科医師と患者さんとに信頼関係ができていないためだと思います。「歯を抜く、抜かない」の最終的な判断は患者さんがすべきで、患者さんに口腔内の状態をよく見せて現状を十分説明したうえでの患者さんの選択だと思うのです。もし「残してほしい」といわれたら最善を尽くす。ですから、患者さんとのコミュニケーションが一番大切だと思います。古谷野●大学病院でも一般の歯科医院でも、これからは患者さんとのコミュニケーションがますます重要になると思いますね。茂久田●先生に代わって、治療や器材のメリットを伝えるコミュニケーションツールや、正しい情報を提供するためのカタログ資料なども、今後さらにメーカーに期待される役割だと自覚して作製しています。古谷野 潔九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野教授 特別座談会  コミュニケーションによる  信頼関係が築けているか?124

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