デンタルアドクロニクル 2017
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84 特別座談会の訪問衛生指導になります。歯科衛生士として気を付けていることは、痛くなった、沁みてきた、黒ずんできた等は、早い時期に察知して重篤化させないことです。歯科衛生士がチームに入ることのメリットは口腔内に慣れない他職種の皆さんに比べて劇的に口腔内の衛生状態が改善することです。このほか施設はもちろん、病院にも訪問診療に赴いていますが、チームに歯科職が入ることでさまざまな視点からディスカッションできるようになりますし、口腔ケアについて有用なアドバイスもできるといった利点がたくさんあります。 このような現場で日々奮闘していますが、私が心掛けていることは、他職種の皆さんと口腔内の観察と評価を必ずするということです。口腔ケアというと道具をまず用意することからはじめがちですが、口腔の観察をまずしましょうということです。1分半くらいでみられる簡単なチェックシートを活用して口腔内をチームで一緒に観察するようにしています(図16)。同じ項目をみるということで問題点も共有できます。そこで使用する道具を考えたり、作戦・戦略を立てることになります。効果がなく、後から使う道具が増えたり、不十分な口腔ケアは功を奏さないといったことも多々あるので、誰が何を使うかを先に決めてしまいます。看護師にアセスメントをかけてもらうときには、課題と目標、対応方法・期間を明確化しています。そしてそれの効果があったのか、なかったのかを示してもらっています。 2つめに心掛けているのは、口腔ケア関連性誤嚥性肺炎を起こさないことです。口腔ケア時に咽頭部に流れ込む水分や血液等を100%回収するのは不可能です。また、姿勢や時間なども関係してきますので、自分で心掛けたり、指導するようにしています。訪問先では口腔内の知識が少ない他職種の皆さんは困っています。「口腔ケアは1日に何回するのですか?」、「時間がないのに1日3回もするのですか?」、「義歯を使っていないのでこのまま使わなくてもよい?」といった具合です。口腔内は十人十色ですから、チーム皆で口腔ケアの方法を考えることがすごく大事になります。そのなかでマネジメント(=ケアの交通整理)をするのが歯科衛生士であり、特別なことをしなくとも多職種連携になります。 診療室で「最近リコールに来ないですね、〇〇さん」という患者さんは必ずいると思います。そのなかにはもともとご高齢であったり、全身疾患や既往歴がある、歩行が不安定でようやく来院されていたり、セルフケアが雑であったり、痩せていたり、逆に肥っていて息切れしていた患者さんも非常に心配ですね。このような患者さんが実は自宅でむせたり、義歯の不具合を気にしながらの食事であったり、本人はもちろん家族もお口のケアで困っているかもしれません。担当の歯科衛生士が「しばらく来院されませんが、お変わりないですか?」のひと言を掛けられるかは非常に大事だと思います。歯科医師よりも担当歯科衛生士が連絡を取るほうが、気軽で強制しない気がしますので、もっと積極的になってもよい気がします。そのようなことからも、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(=か強診)」ならば、救える患者さ図15 「ハイ-ボンドカルボセメント」と「PRGバリアコート」(株式会社松風製)。バリアコートは歯根面の知覚過敏などに効果を発揮。図16 1分半くらいでみられる簡単なチェックシートを活用。OAG、OHATのシートを介護者向けにアレンジしたもの。図17a、b 愛仁歯科医院における外来での口腔機能管理の様子。チェック項目対応1.声がガラガラしたりかすれている咳払いをしてもらう・姿勢が苦しくないか確認する2.口臭がある歯や義歯についた食渣や歯周病、痰、おう吐物があることを念頭にいれておく3.唇の乾燥口を開けてもらう前に、口唇や口角に水や保湿剤を塗る4.口の中の観察a-歯や義歯の汚れ、歯肉の腫れ歯の汚れ、ぐらつきやむし歯、歯肉の腫れや出血・義歯のバネの位置を確認するb-舌や粘膜の汚れ・傷舌苔や口内炎を確認する・乾燥が強い時には保湿するc-唾液の量・性状口を開けてあふれる時や粘りけが強いときにはふきとる5. 嚥下(のみこみ)唾をのんでもらい嚥下できるかを確認する6. 口腔清掃状態良好(自立)~やや不良~不良(要介助)7. 歯の痛みなし~疑いあり~あり(要治療)

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