デンタルアドクロニクル 2018
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69CROSS TALK Part 1Shaping the Future of Esthetics当に幸せだと思いますよ。やはり噛めること、食べることは人生の中で重要ですからね。あと、平原さんは認知症にはならないのではないかと思います。平原 本当ですか?山﨑 本当ですよ。グッと噛んだときに、こめかみに力が入るのは分かると思うのですが、人間の脳は噛むことによって大きな刺激を受けるのですよ。米国でも総入れ歯の人が認知症になる率がすごく高いと言われています。これは、やはり噛む力が弱くなって、脳への刺激が少なくなるからですね。私の患者さんを見ても総入れ歯の方のほうが認知症になる率が高いと実感しています。 それで本当に悲惨な話なのですが、老人介護施設によっては、食事のときに入れ歯を外すような指示をしているところもあるのです。これは入れ歯を誤飲してしまったら、介護施設の問題になってしまうからですね。そうなると、噛まずに飲み込んでしまう。これでは舌も咀嚼筋も働かず、悪い方へ、悪い方へいってしまうわけです。 だから私は、お年寄りでもとにかく噛めるようにしておかないと、あとで子どもたちに迷惑がかかるのだよと伝えるようにしています。 平原さんの場合、歯が健康なことに加えて、歌も唄っているでしょう。口元を動かしている、手先を動かしている人は、認知症にはならないのだよね。有川 そうなのですね。山﨑 だから、いかに歯が大事かということですね。 歯科治療では確かにあまり生命を助けるということはできないのですが、その人の生き方を変えることができるのです。way of lifeをチェンジさせることが、歯科医療の本質だと私は思っています。たとえば、総入れ歯をして噛めなかった人がインプラントですごくきれいで噛める歯になったら、またコンプレックスで笑えなかった人がきれいな歯が入って笑えることができたら、その人の生き方は変わるではないですか。私も長い間歯科医師をやっているので、そういう人をたくさん見てきました。こうして人の人生をチェンジできるのだと感じるときが、歯科医療に携わる者として幸せなときなのです。有川 おっしゃるとおりですね。山﨑 それこそ歌だってそうですよね。すばらしい歌を唄ったら、それを聴いた人の中で、人生の応援歌になっていくわけでしょう。こんなときにこんな曲を聴いたなという、絶対に忘れられない曲がみんなにあると思うのですよ。そういう意味で、やはり人の生き方を変えるということはできるのですよね。平原 共通していますね。山﨑 お互いにね。私はそう思います。有川 すばらしいです。平原 かっこいいですね。山﨑 かっこよすぎたかな(笑)。いや、私は本当にそう思いますよ。やはり人に何か勇気を与えるというのは、すごく大事なことだと思います。有川 本日はありがとうございました。

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