デンタルアドクロニクル 2018
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今後求められる人工歯とは 松風人工歯の変遷からみる、超高齢社会における多様なニーズへの対応81隙を強くする義歯はどうなのかなと思います。だから、リンガライズドオクルージョンのほうがやりやすいけど、側方運動したときは触るような形が自分の実験から考える咬合様式です。今後どのような人工歯を望んでいるか?鈴木 では、それぞれ「今後どのような人工歯を望んでいるか」という話につなげていきながら、そのなかでディスカッションしたいと思います。では、堤先生から。堤 人工歯の要件には、「色調」、「形」、「物性」とありますが(図T-1)、われわれ歯科技工士は、形を優先する人もいれば、色や物性を重要視する人もいます。「形」からとらえますと、基本的に解剖学的でないといけないでしょう。そのなかに、どれだけVeracia SAのような形で機能的なものを組み込んでいくか、かつ審美性も組み込まれてほしいところです。つぎに「物性」です。つまり硬さになりますが、プラスチックの包丁よりもセラミックスの包丁のほうが切れ味がよいですよね。1つの言葉で集約すると「靭性」というか、チッピングなどが起きない金属的な硬さが人工歯にもあればと思っています。耐摩耗は、人工歯と人工歯が接触しての摩耗もありますが、食物との耐摩耗力を上げてほしいというのが要望ですね。耐変色性あるいは劣化は、私にとっては二次的な問題と思っています。「色調」に関しては、可能であればシェードガイドのA2とかA3とかそっくりではなく、天然歯よりももっと「美しいもの」を提供いただきたい。最後に生産的なコストの問題もあるのでしょうが、種類がたくさんあったほうがありがたいですね。 図T-2、3は、前歯と臼歯を今回、発売されたVeracia SA Porcelainでつくったものです。義歯安定のために上顎に調節湾曲をつけますと、人工歯の間隙が少し開き、逆に下顎は近接します。要するに、歯軸の自由度を上げるには角ばった人工歯よりも丸っこい人工歯のほうが、私にとってはありがたいです。松田 私は2003年卒で、補綴科に入局後、奥野先生がNC Veraciaをたくさん使っているのを横でみながら臨床していたのですが、Veracia SAが2009年に出てからは、保険の総義歯は全部といってよいほどVeracia SAを使っています。個人的な利点を挙げると、まず排列がすごくしやすい。教育的にも学生に排列について説明しやすいと感じています。また、両側性のバランスの付与も比較的容易に与えられるので、自分の削合がうまくなった感覚になったくらいです。さらにフルバランスドオクルージョンでもリンガライズドオクルージョンでも両方に使いやすいことや、破折やチッピングが少ないことも利点ですね。Veracia SAは前歯部での接触を付与しやすく、前方運動時の滑走面をつくりやすいので、前歯部での咬断が容易になるという利点もあると思います。 そして私の人工歯に対する要望ですが、まず、高い耐摩耗性をもつ人工歯がほしいと思っています。ですが、正直なとのころ“そこそこの耐摩耗性”でよいという気持ちもあります。というのは、咀嚼運動に合わせて若干の咬耗が起きることは、決して悪いこと図T-1 人工歯の要件。図T-2、3 前歯と臼歯を今回、発売されたVeracia SA Porcelainでつくった総義歯。人工歯の要件形物性色調

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