デンタルアドクロニクル 2018
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 95周年企画 特別座談会82ばかりではなく、実際の咀嚼運動に適したガイド面が付与されるという側面もあると考えられるからです。またVeracia SAの2~3倍くらいの耐摩耗性があれば、義歯再製作のスパンを5〜7年ほどにできるのではないかと思います。たとえば、図M-1は他社の人工歯で4年半使っていますが、このようにほとんど咬耗がみられず、良好に経過している症例もあります。ただ、あまり耐摩耗性を上げていくと、今度はチッピングが起きてくることも経験しています。それでも耐摩耗性が高いほうが、回復された機能を長い間保つことができるのではないでしょうか。 2つ目は、図M-2のように高い審美性をもった人工歯ですね。プレミアムなよいものを求める患者さんもいますから、国産でもう少しきれいな人工歯、堤先生もおっしゃっていましたが、もう少し透明感の高い、「美しい」人工歯がほしいですね。 3つ目は、とくに部分床義歯で経験するのですが、対合が補綴装置であったり、もしくは天然歯であったりする場合に、どうしても人工歯の大きさが合わなくて、咬合面をきれいな形態に保つことができません。いわゆる咀嚼に有効な圧搾空間をうまく付与することができないことを経験しました。ですから、CAD/CAM技術を応用することで、大きさや形態を対合歯に合わせてカスタムできるシステムをつくっていただきたいと思います。 4つ目は、先ほどそこそこの耐摩耗性がほしいとの話をしましたが、義歯装着後に一定期間使用させ、咬合が安定した後に何かしら人工歯に処理をすれば、耐摩耗性が飛躍的に上がる材料がもしできればと思っています。咬合調整が完了した後に材料を置き換える方法もよく聞くのですが、精度が若干落ちてしまうと考えています。たとえば、使った後に金属に置き換える。その置き換える作業の精度を確保するのはかなり困難な気がします。奥野 私は大阪市北区で開業医をしている奥野です。私自身は、松田先生と同じ大学の医局で11年間在籍し、教員をさせていただいた後、開業しまして、今、卒後20年目の臨床経験になります。現在、松風にもバックアップしていただいている5-D Japanという卒後研修のスタディグループのなか図O-1 下顎が天然歯のブリッジ、上顎はパーシャルの症例。図O-2 ブレードになる形のリンガライズドのジルコニア。図M-1 他社保険適用外人工歯。2013年5月装着(4年半経過)。そこそこの耐摩耗性がほしい。図M-2 高い審美性をもった前歯部人工歯。保険適用外の高品質な人工歯透明感、天然歯に近似した蛍光性など。

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