デンタルアドクロニクル 2019
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8巻頭特集1-2 健康長寿社会の実現に向けて、それぞれのライフステージで歯科ができることDr. Akihiro Sugai須貝昭弘(すがい・あきひろ)1982年、九州歯科大学卒業。1988年、神奈川県川崎市にて須貝歯科医院を開業。スタディーグループ火曜会、臨床歯科を語る会、日本小児歯科学会、日本歯周病学会,川崎南部摂食嚥下栄養研究会会員。あらゆる世代を診察できる体制になってきた 私が開業する神奈川県川崎市はファミリー層の多い土地柄、開業以来多くの子どもたちに来院いただき、自ずと子どもたちをう蝕もなく、歯列の良い口腔内にすることが大切だと考えるようになってきました。子どもたちの口の中をみていくにあたり、当院では特別なことをしているわけではありません。咬合育成の視点から、子どもたちを健全な永久歯列に導く歯科医療に取り組んでいくなかで、適切な時期に適切な処置ができるようになってきました。 もともと私は大学卒業後、補綴を中心に学んできたのでそれが必要になった年齢層から成人やお子さんたちにも対応し、幅広い年齢層のニーズに応える医院づくりを行ってきました。なかには三世代、四世代にわたって通ってきている家族も少なくありません。 なぜ長きにわたって当院に通ってきてくれるのか、改めて考えてみると、患者さん一人ひとりに対し、真剣に向き合う姿勢、またこちらの提示する治療方針に患者さんが納得してくれている点だと思います。そして、歯科医師が口の健康を守ることを第一に考えて治療を行っていることが、どの世代の患者さんにも伝わっている点もあるのではないかと思います。ここでいう、口の健康を守るというのは、口の中がう蝕や歯周病にならないよう見守ったり、噛む力や飲み込む力が加齢により低下していかないよう食い止めたり維持したり、快適に食べられるようにすることです。患者さんから“かかりつけ歯科医院は須貝歯科医院”と認められた以上、最後まで責任を果たさないといけないと思います。習癖を見逃さない目を養おう かかりつけ医として患者側から認められたからには、小児に関していえば、きれいな歯列でう蝕もなく育てていくのは大切な歯科の仕事です。ただ、どんなに一生懸命診ていても歯科医師側の知識不足あるいは気づかないで見落としてしまうこともあります。そのひとつが「習癖」です。 先日も地区の矯正専門医の先生方と、習癖は矯正専門医が診るのか一般開業医が診るのかという話になり、昔は習癖があれば歯並びに影響するため、矯正専門医だと思っていたのですが、2018年4月に「口腔機能発達不全症」が保険導入され、小児の口腔機能管理料が加算されました。国としては、習癖は一般の開業医がみるべきだと考えをシフトしたのだと思います。その根底には子どものもつ習癖が、ゆくゆくは高齢者の口腔機能不全や嚥下の問題などにつながると思ったのではないでしょうか。われわれかかりつけ医は子どものときから口の中を診ているので、習癖を見つけ、指導するのは私たちの役目だといわざるを得ません。10代は隣接面う蝕に要注意 このように、当院では子どもを健全歯列に導くために見守り続けていますが、10代になると塾や部活動などで忙しくなり、来院回数も減ってメインテナンスの間隔が空いていきます。そして、この年代は糖分の摂取量が増えるとともに隣接面う蝕が増えるので、注意が必要です。 厚生労働省の歯科疾患実態調査でも、12歳までのDMF指数は非常に数値が下がってきていますが、12歳から18歳くらいまでのDMF指数はそれ程下がっていません。それは隣接面う蝕の予防ができていないからだと思います。隣接面う蝕を予防するには、フロスの使用と生活指導が大事で、当院では患者さんから日頃の食生活などを聞き出し、押し付けにならないメインテナンスを行っています。あらゆる世代の要望に応えられる医院づくりが重要

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