デンタルアドクロニクル 2019
100/180

98JAID特集   2018年7月23日、ドイツ・ベルリンにて行われたTiziano Testori先生のプライベートセミナーを、JAID有志で受講しました。その内容をお伝えしたいと思います。 Testori先生は、抜歯即時埋入をトータル・フェイス・アプローチの一環として行っていました。抜歯即時埋入の症例を供覧するとともに、その治療に関するエビデンスについて詳説されました。その中でも特に印象に残った3つの論文を紹介します。 1つ目は、垂直的歯根破折や歯根吸収症例に関して、感染が抜歯即時インプラント埋入の予後に影響するのかを調べた文献です。369人の患者で合計527本のインプラント埋入されており、平均的な予後観察は54.0ヵ月(5.6~158.3ヵ月)でした。そのうち非感染部位埋入は334本、感染部位では193本で、合計10本が失敗しており、前者では7本で後者では3本です。クリニカルケースレポートで成功率は、非感染部位は97.9±0.8%で、感染部位は98.4±0.9%でした。統計学的にも有意差はないことから、感染部位でも成功率に影響はないことは示唆されました。 2つ目は、審美エリアにおけるフラップレスの抜歯即時埋入の文献紹介です。骨増生とプロビジョナルレストレーションに関する後向きコホート研究の結果が述べられています。抜歯即時埋入では、埋入と同時にプロビジョナルレストレーションを装着することで、粘膜貫通部がプロビジョナルレストレーションの形態に応じて治癒するため、審美的に有利だと考えられていることが示唆されています。 3つ目は、2013年のTestori先生が執筆された、インプラントと唇側面板までの距離(Implant vestibular plate distance:VIP-D)についての論文です。VIP-Dが4mm未満の場合は、抜歯窩のみに骨補填材を充填して、唇側面板の外からメンブレンで覆い、VIP-Dが4mm以上の場合は、同様に唇側面板の外からメンブレンで覆い、抜歯窩だけでなく唇側面板外にも骨補填材を充填する手法が述べられたものです。4mmという距離の明示もわかりやすく、抜歯即時埋入のテクニックには欠かせないと実感しました。 今回のセミナーではヨーロッパの著名な先生の現在のインプラント治療に対する考えに触れることができて有意義な時間を過ごせたと思います。(JAID会員 中島航輝)Tiziano Testori先生の講演の様子。セミナー後にTiziano Testori先生とともに。Tiziano TestoriプライベートセミナーJAIDの国内外での活動

元のページ  ../index.html#100

このブックを見る