デンタルアドクロニクル 2019
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12巻頭特集1-4  健康長寿社会の実現に向けて、それぞれのライフステージで歯科ができることDt. Takao Naitou内藤孝雄(ないとう・たかお)1984年 横浜歯科技術専門学校卒業、医療法人社団嵐城会五十嵐 歯科医院勤務1988年 早稲田歯科技工トレーニングセンター卒業1994年 第2回「デンタルアート&テクニカルコンテスト」 テクニカル部門最優秀賞、アート部門銀賞受賞2011年 臨床的臼歯部形態修正に関する論文をQDT7月号に掲載、日本顎咬合学会学会誌年間優秀論文賞受賞2013年 日本顎咬合学会認定歯科技工士2014年 日本顎咬合学会指導歯科技工士歯科技工士も、まずは患者さんとのコミュニケーションが重要! 近年、筆者は歯科技工士として、日本人の高齢化、そして健康長寿社会に今後どう関わっていくべきか考えさせられています。 筆者は、偶然にもご縁をいただいて歯科技工学校を卒業と同時に現在の歯科医院に勤務し、35年間お世話になってきました。この間、患者さんと直接、当たり前のように関わらせていただけたことは大きな喜びであり、またかけがえのない財産となっています。筆者が歯科技工士として提供した補綴装置が、患者さんの人生に良い影響を与えることができたならば、それは治療に携わったすべての方々に対するせめてもの恩返しになると思います。 その、補綴装置や補綴治療に関する詳細は後に延べますが、ここでまず筆者が歯科医院内で心がけてきたことを述べたいと思います。それは、筆者が製作する補綴装置の状態を確認するだけではなく、筆者が補綴に携わることのない患者さんに対しても、日常からの挨拶とともに、会話を楽しみながら安心して受診していただけるように努めることでした。これは通常、歯科衛生士や歯科助手、受付といったスタッフが当たり前のように行っていることで、歯科技工士がこれを行って悪いはずはありません。 しかし、これは若い世代の歯科技工士には難しいことが多く、歯科医師・歯科衛生士とともにつねに患者さんに関わらせていただいたことによって、筆者にとってもいつしか経験とともに身についてきたことですが、まずは歯科技工士であっても、あらゆる患者さんに対してコミュニケーションを図るように心がけていただきたいと思います。歯科技工所の場合は、今まで以上に歯科医師とのコミュニケーションを確立して、立会いで患者さんとの距離を縮めてゆくと良いと思います。患者さんを前向きな気持ちにできるのも歯科技工士の魅力のひとつ 現在では、インターネットなどから情報が豊富に得られるようになり、患者さんからの補綴に対する要望も多くなってきています。また、時代の変化にともない、歯に対する文化も少し変わってきたと思います。たとえば、筆者世代の女性には人前で大きな口を開けて歯を見せて笑わずに、口元を手で覆い隠して笑うとか、写真を撮るときは歯を見せないようにするといったようなマナーが求められてきました。そこで当時、歯を作る時は、歯の大きさや形は内側に入れ小さく見せるように上品な印象とし、色調に関しては、白く生き生きとしたきれいさは不自然といった見かたがされていました。しかし、それらが現在では、逆になっていることが多いと感じています。これは、いつも若々しく健康でありたいという患者さんの願いの表れであり、たいへん喜ばしいことだと思います。それをお手伝いすることによって、精神的にも前向きに背中を押すことができることも、歯科技工士の仕事の魅力のひとつだと最近思うようになってきました。患者さんの世代別に考える補綴治療・補綴装置の傾向 補綴治療を受ける患者さんを世代別に学童期(7~12歳頃)、思春期(13~19歳頃)、青年~中年期(20~39歳頃)、中年~初老期(40~64歳頃)、高齢期(65歳以上)と分けて考えてみますと、学童期の患者さんは、親の勧めで最寄りの歯科医院に来院してくることが多いかと思います。この時期は患者本人とは別に、歯科医師と学童期の患者の親の間で相談される内容が多歯科技工士の立場から考える、各年代への補綴治療と.コミュニケーション

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