デンタルアドクロニクル 2019
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2019年の歯科界を と導く!!ハートに 火をつけろ!8歯学部生は なぜあんなに 歯科に 興味がないんだろう?月星ちょっと前まで大阪大学と東北大学の臨床教育をさせていただいて、学生さんを教えるわけです。僕は大学の登壇、とても嫌なんですよ。なぜなら学生はほとんど寝ているし。茂久田もったいないですね。月星なぜあんなに歯科に対して興味がないんだろう? 何でこんな人たちにしてしまったんだろう。大学のせいではないんですか?下野いや、あります。今、とくに歯学部や医学部は、社会が求めるような教育をきっちりやっていないですよね。国家試験に合格するための大学教育ですから。その内容は、患者さんが求めている医療と必ずしも結びついていない。 大学教育の目的は、国家試験だけじゃないだろうと僕は考えていました。学生が寝てしまったら自分の負けだ、絶対に寝かせないようにするためにどうしたらいいか。そのために僕らは給料をもらっているわけで。自分だけでなく、講座の若い先生にも、学生が興味を持つような講義をしなさいと、いつも指導していましたよ。月星朝日大学で講師をさせていただいたとき、6年間留年し続けていて、もう1回留年すると自動的に退学になるという生徒から、後日談で「先生の講義を聞いてから、がぜん希望をもてて、それからストレートで卒業しました」と、報告があったのは嬉しかったですよ。歯学部学生の 君たちは どう生きるか?下野もう1つ言わせてもらうと、高校を卒業した人間がポンと入学してくる、まったく何も知らないその18歳を、6年間で国家試験に合格させ、患者さんにちゃんと充填できる、歯を抜けるくらいの教育を施すというのは、これは大変な成果だと思うんです。現有の教員数で、理想に沿って丁寧に手取り足取り教えていたのでは、マンパワーが不足してこれはできない。 それで僕は、米国の教育学者Wil-liam Arthur Ward先生のことば「普通の教師は、ただしゃべる。良い教師は、うまく説明する。すぐれた教師は、自分でやってみせる。偉大な教師は、学生の心に火をつける」のようにありたいと。月星そうですね。海軍大将の山本五十六先生も「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と近いことをおっしゃっていますよね。下野限られた時間の中で、たくさんの新しいことを教えていきたい。情報ってどんどん変わります。今日さんのカタログを見て、こんなすごいメスだとかハサミだとかがいっぱいあるんだなとビックリしました。僕が50年前に卒業したときに、そんなすごいものは何もなかったから! 【 COLLECTION 50,51ページ】 だから、弱々しく見える18歳の学生たちも、潜在的に燃えたぎる情熱をみんな隠しもっていて、月星先生に一言パンと導火してもらえれば、そこでぱっと一気に火がつくと思うんです。月星ベテランへの教育も含めて、私の知識や技術が、私のお話を1回聞いただけでその人のものになるって、そんなことはあり得ないですね。むしろ、大切なこととして、その話から何を感じ取るのか。次は自分は何をすべきかということを学んでくれたほうがうれしい。特に大学では、医療知識や技術の向上よりも、「自分がどんな歯科医師になるかを自分で判断できる」ような人間的教育を望みたいなと思います。53

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