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コリネバクテリウム属

【読み】
【英語】
corynebacterium
【書籍】
nico2021年6月号
【ページ】
34

キーワード解説

 コリネバクテリウム属はグラム陽性桿菌の一種で、ヒトの口腔内や気道粘膜などに存在する常在菌。硬い細胞壁に覆われて殺菌剤への抵抗性が高く、象牙質に及ぶう蝕により象牙細管内に入り込むと、う蝕の治療後も歯髄の滲出液を養分に象牙細管内で生き続ける。
 象牙細管に生き残ったコリネバクテリウムが歯髄から血流に入り込むと、呼吸器などの臓器で病気を引き起こすことは、米国歯科医師会研究所初代所長のウェストン・プライスによる大著『歯科感染症』(1923年)でつとに明らかにされてきた。現在では、喘息、肺炎、扁桃腺炎などの呼吸器、咽頭の疾患のほか、脳疾患、心疾患、腎疾患、代謝疾患、皮膚炎、関節炎、敗血症など多くの疾患にかかわることが知られている。
 象牙細管に侵入した細菌を死滅させることは困難であり、象牙質に及んだう蝕は、咀嚼機能の障害となることはもちろん、全身疾患の重大なリスクとなる。う蝕の予防管理は、全身疾患のリスクコントロールとしても非常に重要である。