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フソバクテリウム属

【読み】
【英語】
fusobacterium
【書籍】
nico2021年8月号
【ページ】
34

キーワード解説

 フソバクテリウム属は嫌気性グラム陰性菌に属する線状菌で、ヒトの口腔内、とくに歯周ポケット内に存在して歯周病に関与する。先端がとがった大型細菌であり、長さは10μmを超える。
 フソバクテリウム属はペリクルに付着する細菌の集団化、つまりプラーク形成の中核を担う細菌である。細長い菌体にレンサ球菌などの小型の細菌を付着させ、菌体全体を球菌で覆ってコーンコブ(トウモロコシ状の集団)をつくることによって、歯間部や歯肉縁下のプラークが形成される。
 近年は、集団化して細胞への侵入力を高めたフソバクテリウム属が、口腔内から大腸粘膜に移動して粘膜細胞に入り込むことにより、免疫応答を攪乱して大腸がんの発生と進行、転移に関与することが明らかになっている。がんの転移抑制に抗菌療法が一定の成果を上げており、口腔環境の改善ががん予防につながることにも注目が集まっている。