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2015年11月7日

日本障害者歯科学会第32回学術大会開催

「治療から予防へ そして支える歯科医療へ」をメインテーマに

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 さる11月7日(土)、8日(日)の2日間、名古屋国際会議場(愛知県)において、日本障害者歯科学会第32回学術大会(福田 理大会長・理事長)が「治療から予防へ そして支える歯科医療へ」をメインテーマに開催され、多数が参集した。開会挨拶で福田氏が述べたように、スペシャルニーズの方への歯科医療環境の整備の次のステップとして、ともに安心して暮らせる社会の実現に向けて、歯科医療ができることは何かを考える会となった。

 1日目の特別講演1は、岡川敏郎氏(医師・中部大生命科学部理学療法学科教授)を招聘。まず、自身が25年間勤務した愛知県立青い鳥医療福祉センターの歴史を振り返りながら、日本における肢体不自由児および重症心身障害児に対する医療と福祉の変遷を解説。次に、1989年の赴任後、同施設において手術室がない環境の中、小児整形外科医として靴の改良や装具の開発など手術に代わる方法で対応したなどの取り組みを紹介。さらに、入所児において、口腔衛生管理の前後で口腔衛生状態の改善はもちろん年間1人平均発熱日数の減少がみられたことにより、歯科の介入の重要性を感じ、2000年から常勤歯科衛生士と非常勤歯科医師の設置に至ったエピソードも紹介した。最後に、重度心身障害児の医療型入所施設は、従来の機能の充実とともに、介護者の悩み相談を含む在宅への医療・口腔ケア・リハビリテーション・定期健康チェックの「出前」機能、外来の充実など、増加する在宅療育の期待に応えるべく意識と構造改革が必要であると強調した。

 また、教育講座1では、安達吉嗣氏(神奈川リハビリテーション病院歯科口腔外科統括部長)が「歯科診療で知っておきたい脳性麻痺の基礎」の演題で登壇。脳性麻痺を、神経伝達経路による分類などからわかりやすく解説した。また、脳性麻痺の子どものユニットへの寝かせ方など具体的なテクニックも紹介した。会場は、立ち見が出るほど盛況であった。

 午後のガイドライン検討委員会では、「『歯科治療時の身体(体動)抑制に関するアンケート』の結果報告と理事長諮問の身体抑制法に関する学会としての意見集約シンポジウム」として、最初に森崎市治郎氏(梅花女子大教授、同会ガイドライン検討委員会委員長)が、同会代議員等154名への身体抑制に関するアンケート結果と、それにもとづく「歯科治療時の身体(体動)抑制に関する手引き」作成のための論点を提示した。次に、立浪康晴氏(富山県開業)が、富山県歯科保健医療総合センター特殊歯科診療科において患者に行った身体抑制に関するアンケート結果を提示し、患者のために術者が何をできるのかを考えなければならないと訴えた。続いて、辻川圭乃氏(弁護士・辻川法律事務所)が登壇。近年の日本における障害者の人権に関する法律を解説し、さらに2016年4月1日に施行される「障害者差別解消法」においては、歯科治療においても合理的配慮の不提供は差別につながると指摘。学会や歯科医師会によるガイドライン作成を期待すると述べた。これを受けたパネルディスカッションでは、会場から質問が多くなされ、熱い議論が交わされた。

 このほか、2日間にわたり、一般口演、ポスター発表、市民公開講座、市民公開シンポジウムなどさまざまなプログラムが組まれ、各会場ともにぎわいを見せた。なお、次回は2016年10月1日(土)と2日(日)の2日間、大宮ソニックシティ(埼玉県)において、島田 篤大会長のもと開催予定。