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2016年5月28日

第7回日本デジタル歯科学会学術大会開催

「拡大し続けるデジタルデンティストリーの世界」をテーマに

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 さる5月28日(土)、29日(日)の両日、道民活動センター かでる2.7(北海道)において、第7回日本デジタル歯科学会学術大会(日本デジタル歯科学会主催、末瀬一彦会長、疋田一洋大会長)が「拡大し続けるデジタルデンティストリーの世界」のテーマのもと、開催された。27日(金)午後に発生した羽田空港のトラブルにともない交通が混乱する一幕があったものの、全国各地から約450名が参加する盛会となっていた。

 初日の会場ではまず、恒例の大会長講演に疋田氏(北海道医療大歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野)が登壇。「拡大し続けるデジタルデンティストリーの世界」と題し、1970年代の黎明期から、今後見込まれる支台歯形成までを含めた「フルデジタルデンティストリー」時代に向けた展望を語った。その後は会場を2箇所に分け、一般口演16題と、各メーカー(シロナデンタルシステムズ、ヨシダ、朝日レントゲン工業、スリーエムジャパンヘルスケアカンパニー)による企画講演が4題行われた。一般口演では、これまでのクラウン・ブリッジを主体とした内容はもちろん、超音波を用いた歯肉厚みの測定法やプロジェクションマッピングを用いたワックスアップの教育法、そしてフルデジタルのパーシャルデンチャー製作法など、近年の技術の進展に即した内容が示されていた。

 続く2日目には、シンポジウム2題と教育講演3題、そして特別講演と特別セミナー各1題に加えランチョンセミナー2題が行われた。シンポジウム1は、「CAD/CAM冠の現状とこれから」と題し、小椋正之氏(厚生労働省保険局医療課)、中村隆志氏(阪大大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座歯科補綴学第一教室)、垂水良悦氏(札幌デンタルラボラトリーDTソリューション部CAD/CAM課)の3氏が登壇。それぞれの演者が、行政、歯科医師、そして歯科技工士の立場から、今後にわたり保険診療のCAD/CAM冠を活用していくための対応について考察した。またシンポジウム2は、「歯科における積層造形法の現状と未来」と題し、上地 潤氏(北海道医療大歯学部口腔構造・機能発育学系歯科矯正学分野)、上田康夫氏(北大大学院歯学研究科口腔機能学講座冠橋義歯補綴学教室)、樋口鎮央氏(和田精密歯研)の3氏が登壇。いわゆる3Dプリンターを用いる積層造形法は従来、試作品を短時間で製作するという意味で「ラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping)」と総称されていたが、近年では技術の進化により最終製品を製作できるようになってきたことから「アディティブ・マニュファクチュア(付加製造技術)」とよばれるようになってきている。本シンポジウムでは、この技術をデジタルデンティストリーに生かした最新の事例について示された。また、教育講演2では「歯科CAD/CAMシステムのフルデジタル化の可能性」と題し、菊地聖史氏(鹿児島大学術研究院医歯学域歯学系歯科生体材料学分野)が登壇。氏は、疋田氏も冒頭で述べていた「フルデジタルデンティストリー」を目指し、支台歯形成の自動化を追求している数少ない研究者。講演では、完全なるデジタルデンティストリーであるところの「フルデジタルデンティストリー」を達成するには支台歯形成の自動化が求められているにもかかわらず、研究がほとんど手付かずになっていることについて述べた上で、とくに専用のCADソフトウェアの開発について解説。研究を進める中で、米国の数学者ドナルド・クヌース氏が開発したフォント設計システム「メタフォント」が非常に参考になったとし、さまざまな字形をコンピュータ上で表現できるフォント作成システムと支台歯形成用CADの共通点について述べた。また、完全な実用化は難しいものの、研究が進むことによってその恩恵がユーザーにもたらされている例として自動車の自動運転を挙げ、「自動車の運転と同様、支台歯形成の完全な自動化は難しい面があるが、自動ブレーキのように術者を支援するシステムとして、また教育用として利用できる価値が今後生じるであろう」とした。締めくくりには試作したロボットによるファントーム模型に対する臼歯部インレー形成の動画も供覧され、会場内の注目を集めていた。

 なお、会期中はポスター発表41題、およびポスター討論も行われ、それぞれが昨今のデジタルデンティストリーに即した内容としていた。来年度は主管校を鶴見大学とし、大久保力廣大会長のもと、きたる2017年4月22日(土)、23日(日)にかけ、鶴見大学記念館(神奈川県)において開催されるとのこと。