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2016年8月20日

深井保健科学研究所第15回コロキウム 開催

「2050年のヘルスケア」をテーマに議論白熱す

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 さる8月20日(土)、東京国際フォーラム(東京都)において、深井保健科学研究所第15回コロキウムが「2050年のヘルスケア」をテーマに開催され、研究者を中心した歯科医師ら約50名が参集した。2050年は、団塊の世代が100歳を迎え、現在10歳の小児が45歳に、30歳が65歳となる。1990年代にWHO歯科部長のバームス氏が提唱した2025年の歯科保健の将来予測になぞらえ、本コロキウムでは「現代版バームス予測」として、2050年のヘルスケアについて議論が行われた。

 深井穫博氏(深井保健科学研究所所長、埼玉県開業)の開会挨拶のあと、まずはヘルスケア関連の最新トピックの報告がなされた。吉野浩一氏(横浜銀行)の座長のもと、竹内研時氏(九大)、佐藤遊洋氏(東北大)、岡本悦司氏(福知山公立大)が登壇。それぞれ「臼歯部の噛み合わせと高齢者の身体機能の関連」「口腔保健とIADLとの関連に関するコホート研究」「知的障害児の増加と出生時体重ならびに母年齢との関連」について発表した。

 続いて、花田信弘氏(鶴見大)の座長のもと、神原正樹氏(大歯大、神原グローバルヘルス研究所)と深井氏により、本コロキウムの課題提起が行われた。神原氏は現在の治療中心の歯科医学教育の問題点を挙げ、2050年を視野に入れた教育内容の必要性を訴え、深井氏は2050年の人口動態・疾病構造の変化をもとに、ヘルスケアと口腔ヘルスケアの変容を予測し、新たな歯科医療の役割の可能性について言及した。

 その後、シンポジウムが2題行われ、シンポジウム1「歯科医療ニーズと歯科専門職数」では、安藤雄一氏(国立保健医療科学院)をモデレーターに、氏が「歯科医療ニーズと歯科医師需給」、恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)が「NDBからみる歯科医療・口腔保健ニーズ」、大島克郎氏(日歯大)が「補綴治療ニーズに関する将来予測」と題して発表を行った。

 続くシンポジウム2では、「健康課題と歯科医療・口腔保健」をテーマに、深井氏のモデレーターのもと、嶋崎義浩氏(愛院大)が「健康長寿高齢者―高齢者の口腔機能低下―」、上野尚雄氏(国立がん研究センター)が「がん医療の最前線と将来予測」、片岡竜太氏(昭和大)が「健康長寿社会に向けての多職種連携教育」、花田氏が「2050年のヘルスケア像」と題して講演した。

 その後はさらに参加者によるワークショップが行われ、グループに分かれた参加者が、2050年の「歯科医院のあり方の変化」や「歯学部のあり方の変化」などについて、将来予測と必要な研究課題を議論し合った。2050年はまだ先のことで、将来像は固定されたものではないが、それでも本コロキウムで共有された情報をふまえて、研究者や開業医、教育者など、それぞれ立場の異なる参加者たちが意見をぶつけ合い、白熱した議論が展開された。
    
 コロキウムの最後には、深井氏が再び登壇。人口構造・長寿化、疾病構造の変化、技術の進歩、人々の欲求・社会的ニーズの変化の観点から、口腔ヘルスケアが健康社会実現に向かってその役割を果たしていくためには、口腔疾患の治療中心の歯科医療から、多職種連携に基づく健康創造型の歯科医療・口腔保健へと転換することが必要と述べた。そのために必要な取り組みは、(1)ハイリスク者に対する効果的なヘルスケアに関する研究を蓄積し、健康格差の是正を推進、(2)口腔ヘルスケア技術に関する研究の蓄積とその成果の多職種との共有、(3)エビデンスと口腔保健ニーズに基づくより効果的なセルフケアの推進、(4)歯科医療の健康増進効果を社会経済的な視点から検証し、持続可能な国民皆保険制度のための新たなシステムを提案するための研究、および地域の歯科医療機関の機能分化に関する研究と実践の促進、(5)多職種連携と健康増進に基づく歯科医学教育の体系化と実践にあると提言し、結びの言葉とした。

 なお、本コロキウムおよび将来予測と提言の詳細は、深井保健科学研究所ウェブサイト(http://www.fihs.org/)および同所発行の『ヘルスサイエンス・ヘルスケア』のVOL16, No.1に掲載される。