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2016年10月27日

日本歯科保存学会2016年度秋季学術大会(第145回)開催

「生涯使う歯の大切さ-変わりゆく保存治療-」をテーマに

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 さる10月27日(木)、28日(金)の2日間、キッセイ文化ホール(長野県)において、日本歯科保存学会秋季学術大会(山本昭夫大会長、興地隆史理事長)が、「生涯使う歯の大切さ-変わりゆく保存治療-」をテーマに開催された。

 初日のシンポジウムIは、「新たな接着技法による修復処置 」と題して、以下の演者・演題で講演が行われた。
講演1「保存修復に期待される新材料技術の現状と将来展望」(宮崎 隆氏、昭和大)
講演2「再治療を抑制するための取り組み」(西谷佳浩氏、鹿児島大)
講演3「歯科用 CAD/CAM システムによる歯冠修復の概要と臨床的要点」(風間龍之輔氏、医歯大)
 宮崎氏は、現在ある種々の歯冠修復材料の物性を概説。そのうえで間接歯冠修復においては、その成形加工法がデジタル技術の進展により変貌しつつあるとし、なかでもジルコニア系新セラミックスは旧来の金属系歯冠修復材料を超える可能性を秘めているとした。その一方で、エナメル質の構造と物性を考慮すると、現在ある歯冠修復材料はその理想的な代替とはいえないとした。そのため、エナメル質を再生させる治療法や、う蝕抵抗性を増すためにエナメル質を改質・強化する方法が模索されるのが本来的であるとして、日本歯科保存学会に期待を寄せた。

 特別講演1では、「超高齢社会の到来と歯科医療の将来展望」と題して角 保徳氏(国立長寿医療研究センター)が登壇。角氏は、高齢化の進展や疾病構造の変化によって歯科医療に対する国民の需要も変化しているとして、今後の歯科界の発展には、口腔ケア・口腔管理を全身状態の改善や全身疾患の予防に向けた医療の一環として位置づけ、多職種連携のなかでの高齢者医療に歯科が参入していく必要があると述べた。

 2日目のシンポジウムIIは、「生涯に渡る歯周病治療」と題して、以下の演者・演題で講演が行われた。
講演1「『健康貯金』と考える若年期の歯周病治療 」(高柴正悟氏、岡山大)
講演2「栄養状態から考える壮年期の歯周治療」(西村英紀氏、九大)
講演3「高齢者の歯周病治療の現状と展望 -フレイル状態から介護状態-」(佐藤 聡氏 、日歯大新潟)
 高柴氏は、歯周病の予防に若年期から努めることを「健康貯金」と名付け、単に歯を磨くことだけではなく、患者に自分の体質や生活習慣を知ってもらうことが重要であるとした。そのうえで「健康相続」という言葉も提唱し、口腔内外の健康に対する教育を親から子へ相続していく社会を理想とした。西村氏は、とくに壮年期の男性はovernutritionの状態にある割合が多いとし、歯周病などの炎症性疾患に対する感受性が亢進するといわれていることを、文献を元に解説。そのうえで、overnutritionによる歯周炎症の増幅機序の知見を述べ、考えられえる対策を語った。

 そのほか、認定研修会「歯根未完成歯の歯内療法の考え方」(五十嵐 勝氏、日歯大新潟)、シンポジウムIII「マイクロスコープの活用による歯内・歯周治療」、ランチョンセミナー、研究発表(口演)、ポスター発表など、保存修復・歯内療法・歯周療法が三位一体となったプログラムが多様に組まれ、盛会となった。