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2016年11月6日

1DAYセミナー「2016年 本当の予防歯科を考える」開催

スウェーデン・マルメ大のHaensel-Petersson氏を招聘

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 さる11月6日(日)、UDX ギャラリーネクスト(東京都)において、「2016年 本当の予防歯科を考える~予防歯科先進国スウェーデンから学ぶ~」(クロスフィールド株式会社主催)が開かれ、歯科衛生士を中心に約160名が参集した。

 この1DAYセミナーでは、「予防歯科先進国」として注目されるスウェーデンの中でも、特に歯科教育のレベルが高いと評価されているマルメ大学からGunnel Haensel-Petersson 氏(同大准教授)をメイン演者に招聘。演者の1人である西 真紀子氏(アイルランド・コーク大)の通訳を介して、従来の治療型から予防中心型への転換に取り組む歯科医療者に向けて、情報提供がなされた。Haensel-Petersson氏の講演では、スウェーデンの歯科医療制度と、氏が長年研究している、う蝕のリスク評価・管理の手法などが語られた。

 スウェーデンでは、国主体の予防制度が定着しており、診療所の半数は公立である。人口約990万人に対し、歯科医師は約7,600人、歯科衛生士は約4,100人で、そのうちの半数以上がそうした公立の診療所や病院で働いている。
 19歳までは無料で歯科治療が受けられるが、20歳以上でも「キャピテーション(capitation)」という、個人のリスクに応じて決まる年間治療費を支払う制度を利用することで、リスクの低い者はより安い金額で歯科受診ができるようになっている。
 リスク評価の手法については、日本の歯科医療者にもなじみ深い、マルメ大開発のソフトウェア「カリオグラム」をもとに解説。こうしたソフトウェアを例に、スウェーデンでは患者の歯科疾患リスクを評価するしくみが浸透していることが明示された。

 また、西氏の講演では、日本より30年早く予防にシフトしたスウェーデンの現状から、日本の歯科医療の15~30年先の未来が予測された。
 スウェーデンでは、1950~1960年ごろに"う蝕の洪水"時代があり、1960年ごろにフッ化物配合歯磨剤が登場。日本がDMFTの低下に取り組んでいた2000年ごろには、いちはやく一部のハイリスク者への対応に傾注してきた。その結果、歯が残る高齢者が増加し、いまでは無歯顎者はほぼ0、総義歯は"絶滅危惧種"となっている。
 一般に、「むし歯が減ると歯医者の仕事がなくなる」という声があるが、スウェーデンでは、「もっと美しく、もっと若く」と高齢者の歯科需要が増している。予防に転換しつつある今後の日本の歯科医療にとって、スウェーデンの状況は示唆に富むものだといえるだろう。

 そのほか、スウェーデンのTePe社のLina Gassner Kanters氏(歯科衛生士)が登壇し、歯周病予防のための同社製品の活用法を説明した。また、講演後には質疑応答の時間が設けられ、唾液検査を行う対象の選び方をはじめ、日常臨床についての質問がHaensel-Petersson氏に多数寄せられた。