Quint Dental Gate 歯科のコミュニケーションサイト

文字サイズ
標準
特大

トピックス


2017年2月12日

国際咬合シンポジウム2017開催

咬合の理論と実践を語りあう場に300名超が集い、盛会となる

ログインされますと、関連書籍が表示されます。
会員でない方はこちら
(※関連書籍がないトピックスは表示されません)

 さる2月12日(日)、東京医科歯科大学鈴木章夫記念講堂において、国際咬合シンポジウム2017(クインテッセンス出版主催)が開催され、300名超が参集し盛会となった。

 まず、小社代表取締役社長・北峯康充の開会挨拶の後、座長を務めた古谷野 潔氏(九大大学院歯学研究院インプラント・義歯補綴学分野教授)による講演「咬合は変わったか?」が行われ、咬合理論の変遷について多数の文献をもとに言及。そして咬合治療の目標を「維持」「修正」「再構成」の3つに分けたうえで、従来の咬合治療のような「理想咬合」をすべての患者に求めるのではなく、個々の生体の許容範囲や正常範囲を考え、機能的側面から咬合をみつめるべきとした。

 引き続き、Martin Gross氏(イスラエル開業)が登壇。午前は「科学的視点から現代咬合の基本を考える(基礎・理論編)」と題し、午後は「症例に応じた咬合付与を考える(臨床編)」と題して、氏の536ページにも及ぶ大著『咬合のサイエンスとアート』(クインテッセンス出版刊)を咬合の歴史とともに紐解きながら、臼歯部咬合支持、咬合高径、偏心運動時の誘導などについて詳説。多くの参加者が熱心に耳を傾け、メモをとる姿も見られるなど、Gross氏の講演を心待ちにしていた様子がうかがえた。

 筒井照子氏(福岡県開業)は、午前は「咬合と全身のかかわりについて(基礎・理論編)」、午後は「SMC分類に沿った各種治療の実際(臨床編)」と題して登壇。基礎・理論編では、咬合論には口腔が壊れた原因を取り除いてできるだけ体を元に戻す「生理学的咬合」と、欠損した歯列を人工物で補う「補綴学的咬合」の2つの咬合論があるとしたうえで、崩壊の原因には患者の態癖が関与していることが多く、患者の生活背景や体のバランスなど全体をみることが重要としたうえで、さまざまな症例を通じて態癖へのアプローチについて述べた。

 臨床編では、氏が口腔崩壊の道筋の違いを骨格型(Skeletal Pattern:S)、筋肉型(Muscle Pattern:P)、咀嚼型(Chewing Pattern:C)に類型化した「SMC分類」に基づき、スプリント療法、矯正治療、修復治療により対応した数多くの症例を提示した。なかでも、バーチャル咬合器などを用いた限界運動、咀嚼運動の動画を用いた評価法は、会場の関心を集めていた。

 午後の部の山崎長郎氏(東京都開業)による講演「アンテリアガイダンスと犬歯誘導の重要性」では、アンテリアガイダンスの重要性について解説。とくに前歯被蓋関係ではどこまでが適切で、どこからが問題となるかについて解説し、アンテリアガイダンスの決定要素と臨床的構築方法についても長年の臨床経験に基づく考え方を披露した。

 前田芳信氏(阪大大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野教授)による講演「可撤性補綴装置を用いた補綴治療における咬合を考える(RPDとIODを中心に)」では、可撤性補綴装置での咬合の役割や、天然歯、インプラント、義歯における咬合に関する生理学的背景について言及。なかでも、咬合力の調節機能は天然歯が当然優れるものの、固定性ブリッジとインプラントでは、ほぼ同等であることなどを文献とともに述べた。

 講演終了後には、古谷野氏による進行のもとディスカッションが行われ、咬合学における識者が一堂に会した本シンポジウムは、演者らの活発な討議によって臨床家が指標とすべき咬合のあり方をそれぞれ考える1日となった。