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2017年3月19日

第7回 九州大学再生歯科・インプラント研究会 学術講演会開催

上部構造の固定法をテーマに、臨床に直結する多くの内容が議論される

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 さる3月19日(日)、福岡県歯科医師会館(福岡県)にて、第7回 九州大学再生歯科・インプラント研究会 学術講演会が、「今だからこそ考える 上部構造の固定法」をテーマに、盛大に開催された。

 最初に登壇した古谷野 潔氏(九大教授)は、まずインプラント上部構造の固定法の変遷に言及。下顎無歯顎の前歯部への応用からスタートしたインプラント治療が、徐々に適応症を拡大していく過程で、スクリュー固定、セメント固定においてそれぞれどのようなアバットメントが応用されてきたかを概説した。また、主要なインプラントシステムではスクリュー固定がまず主流となり、その後セメント固定、そしてまたスクリュー固定が多く用いられるようになった変遷を提示し、各固定法の特徴にも触れた。

 次に木原優文氏(九大)は、まず文献レビューなども用いながら、セメント固定、スクリュー固定の利点・欠点を整理した。そして、スクリュー固定はパッシブフィットした結合部が緩みや破折を生じやすいこと、一方セメント固定はセメントが残留することでインプラント周囲炎のリスクを高めるといったそれぞれの短所についても詳説し、上部構造の材料も含め、適応症を見極めることの重要性を述べた。さらに、難しいとされるセメント固定の維持力のコントロール、セメントの残留防止についても、各種手法を紹介した。

 午後は、田中秀樹氏(福岡県開業)が登壇し、数多くの長期症例などを供覧しながら、インプラント補綴の上部構造の維持方法とその選択基準について考察した。そして、各種固定法のメリット・デメリット、さらには上部構造が消耗品であることをあらかじめ患者さんに説明することの大切さを説いた。さらには、前歯部審美領域における治療のポイントにも触れ、たとえば粘膜貫通部の歯肉縁下が深い場合はスクリュー固定を選択するなど、具体的な適応症の見極めについても細かく解説した。

 最後は、武田孝之氏(東京都開業)が登壇。上部構造の重要な選択決定要素として、患者側の条件(年齢、リスク、要望、上下顎の対咬関係)、埋入条件(埋入角度、位置、隣接歯との関係)などを挙げた。そのうえで、適切なポジションへのインプラントを埋入が重要であることを強調した。さらには、要介護高齢者におけるインプラントトラブルの問題に触れ、清掃不良による誤嚥性肺炎、対顎への咬傷などを予防することへ意識を持つ必要があると述べ、インプラントが邪魔者とならない適用をすべきだと語った。

 その後は、松下恭之氏(九大准教授)が登壇し、インプラントのアクセスホールの封鎖に関する講演を行ったのち、松下氏と演者を交えたディスカッションが行われた。そこでは、スクリュー固定、セメント固定の選択基準にとどまらず、補綴物の咬合面のマテリアル、プラットフォームスイッチングの有効性、また田中氏と武田氏がその有効性を講演で述べたAGCの特徴になどついていずれも示唆に富んだ議論が交わされ、終始盛況を博した本講演会を締めくくった。