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2017年4月22日

第8回日本デジタル歯科学会学術大会開催

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 さる4月22日(土)、23日(日)の両日、鶴見大学記念館(神奈川県)において、第8回日本デジタル歯科学会学術大会(大久保力廣大会長、末瀬一彦理事長)が開催された。学会創立以来8回目の学術大会となった今回も、全国から450名以上が参加する盛会となっていた。

 初日の会場ではまず、恒例となっている大会長講演に大久保氏(鶴見大歯学部有床義歯補綴学講座教授)が登壇。「有床義歯のデジタル製作」と題し、DENTCAシステム(米国・DENTCA社)を用いたデジタル総義歯の製作や、総義歯にくらべてさまざまな技術的課題を残すパーシャルデンチャー製作の現状などについて述べた。なお、パーシャルデンチャーのフレームワークの製作に関しては、金属の粉末積層加工とミリング加工を1台の加工機で行う「ハイブリッド加工」が今後期待されるとした。

 また特別講演では、「計算解剖学に基づく医用画像認識と自動手術計画」と題し、佐藤嘉伸氏(奈良先端科学技術大学院大情報科学研究科)が登壇。CTなどで撮影された医用画像の完全な理解をめざす「計算解剖学」は、人体解剖の知識と映像化の知識を基に各臓器の平均的形状と空間的位置関係をデータベース化し、画像からよりリアルな臓器の位置・形態を自動認識させるというもの。また、この上位領域である「多元計算解剖学」は、計算解剖学に時間軸や病理所見などを融合させるもので、これにより人工股関節の埋入位置の自動計算を行った例や、将来的にはガンの進行の予測などにも役立てたいとした。なお、今後の展望として、統計学習に基づく循環型手術支援をめざすとした。

 そしてシンポジウム1では、「デジタル技術を応用した卒前歯学教育」のテーマのもと、米山喜一氏(鶴見大歯学部有床義歯補綴学講座)、上田康夫氏(北大大学院歯学研究科口腔機能学講座)、および近藤尚知氏(岩手医大歯学部補綴・インプラント学講座)が登壇。それぞれ、大学で教育に携わる立場から、現状のカリキュラムの紹介や今後望まれる教育内容などについてディスカッションした。

 なお、初日には各メーカーの協力による「企画講演」が6題、および一般口演も多数行われ、それぞれ盛況となっていた。

 続く2日目には、シンポジウム3題と教育講演1題、そして海外特別講演と教育講演と特別セミナーが各1題、さらにランチョンセミナーも4題行われた。シンポジウム2は、「CAD/CAMパーシャルデンチャーの現状」と題し、仲田豊生氏(鶴見大歯学部有床義歯補綴学講座)、白石浩一氏(愛院大歯学部有床義歯学講座)、濱中一平氏(福歯大咬合修復学講座)、および西山弘崇氏(昭和大歯科病院歯科補綴学講座)の4氏が登壇。上述の「ハイブリッド加工」の詳細(仲田氏)や、粉末積層加工と鋳造法との比較(白石氏)、ノンメタルクラスプデンチャー製作への試み(濵中氏)、そしてナノジルコニアやPEEK材料の応用への検討(西山氏)などが話題となっていた。またシンポジウム3は、「デジタルワークフローに歯科技工士がどうかかわるのか」と題し、「インハウスCAD/CAMシステムの優位性」(菅原克彦氏、歯科技工士・ケイエスデンタル)、「デジタル技術が変える歯科技工」(河村 昇氏、歯科技工士・鶴見大歯学部技工研修科)、および木原琢也氏(歯科技工士・鶴見大歯学部クラウンブリッジ補綴学講座学部助手)の3氏が登壇。自らが行いたい・製作したい技工物にあわせたシステムを自社で所有することのメリット(菅原氏)や、デジタル化によって製作・加工が可能になった材料や技工物の紹介(河村氏)、そして「歯科技工士から口腔工学士へ」のコンセプトを掲げたもの(木原氏)まで、多彩な内容となっていた。

 なお、特別講演には上述のDENTCAシステムの開発者であるTae Hyung Kim氏(南カリフォルニア大)が招聘され、「Total digital workflow for fully edentulous patients: CAD-CAM denture to new 'Dentca-on-4'」と題し登壇。内容は主に、DENTCAシステムを用いた総義歯の製作、効率の良い即時義歯の製作、ロケーターアバットメントを用いたインプラントオーバーデンチャーの製作、そして「T-bar」を用いたインプラント補綴、の4点。「T-bar」は、Kim氏が考案したインプラント中間構造の名称。フルアーチに対して4~6本のインプラントを埋入し、それぞれのインプラント体に近遠心的に1歯程度のカンチレバーとなる金属性の短いバーを装着するもの(最大のカンチレバー長さは28mmとのこと)。これに対し、装着されるフルアーチのインプラントオーバーデンチャーの粘膜面には凹面を設け、T-barをいわば内冠に、粘膜面に設置された凹面を外冠として用いるもの。維持には仮着用セメントを用い、また両側最後臼歯部に1ヵ所ずつスクリュー留めを行う(行わない場合もあるとのこと)。なお、本法のメリットは、インプラントが埋入できさえすれば追加の骨造成は不要となること、インプラントの角度補正を行えること、またクリアランスが少ない症例にも使用できること、などを挙げた。また、特別セミナーには佐々木正二氏(歯科技工士・大阪セラミックトレーニングセンター宮崎校)が「CAD Designを用いたオールセラミッククラウン製作」と題して登壇。あらかじめマメロン形状をライブラリー化したCADソフトウェアを用い、最低限の陶材築盛で高い審美性を得る方法について示し、注目を集めていた。

 なお、会期中はポスター発表36題も提示され、それぞれが昨今のデジタルデンティストリーに即した内容としていた。来年度は主管校を岩手医科大学とし、近藤尚知大会長のもと、きたる2018年4月14日(土)、15日(日)にかけ、アイーナいわて県民情報交流センター(岩手県)において開催されるとのこと。