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2017年6月30日

日本補綴歯科学会第126回学術大会開催

「補綴歯科がめざすもの、求められるもの」をテーマに

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 さる6月30日(金)から7月2日(日)の3日間、パシフィコ横浜およびヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル(いずれも神奈川県)において、日本補綴歯科学会第126回学術大会(大久保力廣大会長、松村英雄前理事長、市川哲雄新理事長)が開催された。今回のメインテーマは、前回に引き続き「補綴歯科がめざすもの、求められるもの」。以下に、主要な演題の中から6題の概要を示す。

(1)理事長講演「歯科の基盤を支え、創る補綴の矜持」(市川氏〔徳島大医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野〕)
 このたび、2017~2018年の日本補綴歯科学会理事長に就任した市川氏。その記念すべき理事長講演で氏は、今後の補綴学会にかかわるキーワードとして(1)補綴の矜持、(2)Innovation & Traditional、(3)Global & Regional、(4)Macro & Micro、そして(5)Art & Scienceの5つを挙げて順次解説。今後、小児歯科や保存歯科、そして補綴治療のニーズは減っていくとされる中、高齢者人口やインプラント治療の増加はむしろニーズの増加につながるとし、「高齢期を生き抜く口腔健康管理」「補綴的口腔健康管理ができる歯科医師の要請」が求められるとした。また、進展著しい補綴治療のデジタル化(Digital Prosthodontics)に関しては、中長期的予後の検証や教育基準、ガイドラインの整備などが必要であるとした。また、「補綴歯科専門医」の標榜についても目標のひとつであるとした。

(2)メインシンポジウム「未来に向けた補綴歯科のアイデンティティー」(池邉一典氏〔阪大大学院歯学研究科顎口腔機能再建学分野〕、櫻井 薫氏〔東歯大老年歯科補綴学講座〕、古谷野潔氏〔九大大学院歯学研究院口腔機能修復学講座〕、松村英雄座長、市川哲雄座長)
 本シンポジウムでは、池邉氏が「心身の健康からみた咬合・咀嚼の価値」、櫻井氏が「老年歯科からみた補綴歯科の重要性と独自性」、そして古谷野氏が「口腔インプラントからみた補綴の重要性と独自性」と題して講演。まず池邉氏は、演題のとおり咬合・咀嚼が全身の健康にいかに影響するかについて解説。メタボリックシンドロームや動脈硬化、そして運動機能や認知機能に至るまで、咬合・咀嚼すなわち補綴歯科が関与していることを示した。その上で、補綴治療は一次予防であり、学会内で深く探求して社会に広く発信することの重要性を訴えた。また櫻井氏は、種々の辞典や用語集から老年歯科医療、および補綴治療の定義についてピックアップし、「とくに高齢者への訪問診療においては専門的な義歯を扱う能力が必要とされる(老年歯科医学用語辞典)」「障害された機能を回復するとともに、継発疾病の予防を図るために必要な理論と技術を考究する学問(歯科補綴学専門用語集)」などを示しつつ補綴治療が全身の健康に関わることを提示、また「未病」の概念についても言及し、単なる歯牙欠損症、あるいはそれが原因の咀嚼障害として欠損に関わるのではなく、「未病」として全身にかかわってくることを知ることが重要であるとした。そして古谷野氏はインプラントの立場から補綴治療について解説。インプラント治療は集学的な行為であるが、その目的は欠損補綴そのものであり、インプラント埋入の時点から補綴治療は始まっているとした。その上で、米国のAmerican Board of Prosthodonticsでも補綴専門医試験にあたっては自らインプラント埋入を行った症例が2症例求められることを紹介。その後、インプラント治療における偶発症や超高齢社会における問題点などについて述べた上で、「補綴治療は大工仕事と揶揄されがちだが、最後に噛めるようにするのは補綴の仕事。補綴のアイデンティティーはトリートメントプランニングにあり、大工の側面はありながら、全体を統括する建築士のような役割を果たしている」と締めくくった。

(3)シンポジウム1「CAD/CAMデンチャーはどこまで進んだのか」(水口俊介氏〔医歯大大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野〕、新保秀仁氏〔鶴見大歯学部有床義歯補綴学講座〕、疋田一洋座長〔北海道医療大歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野〕、永尾 寛座長〔徳島大大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野〕)
 本シンポジウムでは、水口氏が「CAD/CAMコンプリートデンチャーがめざすもの」と題し、また新保氏が「CAD/CAM技術応用した可撤性補綴装置」と題してそれぞれ講演。前者では、水口氏がかねてから行っているCAD/CAMコンプリートデンチャー研究の最新事情について紹介。口腔内光学スキャナーによる直接印象採得への試みや、3Dプリンターを用いたゴシックアーチトレーサーつき個人トレーの製作、また人工歯の装着法などに関する課題について示した。その上で、世界での最新事情として本年3月にドイツで開催されたInternational Dental Show視察で得られた情報も紹介した。また後者では、DENTCAシステム(米国Dentca社)による総義歯製作の実例や、同システムの印象用トレーを用いて印象採得後、3Dプリンターでピエゾグラフィー用のトレーを製作する方法、またCAD上でオトガイ孔を正確にリリーフした例などについて示した。

(4)臨床リレーセッション1「咬合支持に起因する難症例への補綴学的アプローチ:Eichnerの分類に応じた補綴介入」(兒玉直紀氏〔岡山大学病院咬合・義歯補綴科〕、荻野洋一郎〔九大大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野〕、松田謙一氏〔阪大大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野〕、大川周治座長〔明海大歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野〕、築山能大座長〔九大大学院歯学研究院口腔機能修復学講座インプラント・義歯補綴学分野〕)
 本セッションでは、「低位咬合症例に対する考察とその対応」と題して兒玉氏が、「アンテリアハイパーファンクション:その特徴と対応および予防について考える」と題して荻野氏が、そして「全部床義歯における難症例(シングルデンチャー、高度顎堤吸収症例)についての考察と対応」と題して松田氏がそれぞれ講演。兒玉氏はEichner A、B2、B3など臼歯部に咬合支持のある症例における低位咬合について解説。低位咬合が顔貌や顆頭の位置、および筋肉に影響をもたらすかといった話題や、各種文献に基づいた適切な咬合挙上量などについて症例を交えながら示した。また荻野氏は、Eichner B4、C1、C2など臼歯部の咬合支持を失った場合に生じるアンテリアハイパーファンクション(コンビネーションシンドローム)について考察。その特徴や、難症例を理解するためのCummerの分類や上減歯列の概念、またインプラントによる欠損形態の改変や、可撤性義歯での対応などについて示した。そして松田氏は、Eichner C2、C3の中でも高度顎堤吸収やコンビネーションシンドロームを生じている難症例について考察。それぞれにまつわる問題点につき、「術式の難しさ」「解剖学的な難しさ」「心理的な難しさ」に大別したうえで各論を展開。その上で、「難症例に臨んでは、『なぜ難しいのか』を理解することが早道である」と締めくくった。

(5)臨床リレーセッション3「CAD/CAM冠 ―術者目線の支台歯形成―」(西川義昌氏〔鹿児島県勤務〕、六人部慶彦氏〔大阪府開業〕、五味治徳座長〔日歯大生命歯学部歯科補綴学第2講座〕、中村隆志座長〔阪大大学院歯学研究科口腔機能再建学講座クラウンブリッジ補綴学分野〕)
 本セッションでは、西川氏が「CAD/CAM冠における支台歯形成の注意点」と題し、六人部氏が「CAD/CAMデジタルデンティストリーにおける支台歯形成の注意点 ―Not How, But Why―」と題してそれぞれ講演。前者では、CAD/CAM冠の支台歯形成であっても従来の基準を遵守するとしつつ、CAD/CAM冠ならではの注意点について詳説。CAM加工に用いられるミリングバーの先端径を意識した丸めかたや、さらには外形に相似した支台歯形成を行うための支台歯形成の面基準についても多くの時間を割いて述べた。また六人部氏はまず「最終外形が分からなければ、支台歯形成は行えない」と述べ、「その歯冠外形のためのマテリアルスペースを確保することが支台歯形成である」と定義。その上で、隣接面を無理に歯肉縁下に形成する必要はないこと、多くの術者が中切歯の削除量が不足しがちであり、それを防ぐためには矢状方向からの確認が必要なこと、またリダクションガイドを必ず用意することなど、長年の臨床から導かれたコツを披露した。また、歯科医師であっても歯冠形態を熟知することが重要で、そのためのデッサンやサンプル製作といった研鑽が必要であるとした。

(6)臨床リレーセッション4「歯科技工士から補綴臨床医への提言 ―臨床と技工の匠に学ぶ―」(樋口鎮央氏〔和田精密歯研〕、伊原啓祐氏〔鶴見大歯学部歯科技工研修科〕、木林博之氏〔大阪府開業〕、森田 誠氏〔京都 歯立屋〕、末瀬一彦座長〔大阪歯科大学歯科審美学室〕、佐藤洋平座長〔鶴見大歯学部有床義歯補綴学講座〕)
 本セッションでは、樋口氏が「再製のない補綴と技工を目指して」、伊原氏が顔貌に調和した補綴装置を製作するために ―正中の傾斜を防ぐために必要な情報とは―」、そして木林氏と森田氏が共同で「前歯部審美修復における歯科医師と歯科技工士間の相互連携」と題してそれぞれ登壇。樋口氏は、大規模技工所に勤務する立場を生かした補綴物再製に関する統計調査の結果を供覧。現在の全体的な再製率が2.7%であることを示し、さらにどういったクレームにより再製に至ったのかを細分化して解説。その中で、問題の多くは適合にあると述べ、それを踏まえた印象採得法や採得後のトレーの扱いかた、また閉口印象による精度向上の提案などについて述べた。また伊原氏は、咬合器上のみで前歯部補綴装置を製作する際に起きがちな正中の傾斜への対応について述べ、いわゆるホリゾンタルバーを用いた咬合採得によって正中の傾斜は防げると思われがちであるが、実際にはホリゾンタルバーの設置ミスによる失敗も多く、確実な設置の必要性を訴えた。また、患者の顔貌を模型のみから読み取ることは不可能であることから、顔貌写真のラボサイドへの提供が重要であるとした。そして木林氏と森田氏は、15年間ともに臨床に取り組んできた経験を踏まえた、チェアサイドとラボサイドのコミュニケーションについて提示。とくにプロビジョナルレストレーションを用いた歯肉レベルのコントロールと、その最終補綴装置へのトランスファーについて詳説し、歯科医師と歯科技工士が共通の知識をもつことの重要性を示した。また、歯科技工士に対する歯科医師からの評価としてもっとも分かりやすい基準は技工料金であるとし、技術に見合った報酬を支払うことの重要性を強調した。

 この他、会場では時宜に即した各種セッション・シンポジウム・一般口演・ランチョンセミナーなどが活発に行われ、いずれも盛況であった。